神保町花月 湘南すずらん大学物語#3

『湘南すずらん大学物語 最終章 俺たちのビッグ・ウェイヴ』
脚本:丸山 智子
演出:湊 裕美子
出演:
2丁拳銃/武内由紀子/天狗/はんにゃ/チョコレートプラネット
タカダ・コーポレーション/キューティーブロンズ/大好物/他
あらすじ(HPより)
対立し合う学生たちにいよいよ決着の時が来る。
熱い青春だけが取り柄で、生き方下手の貧乏学生たちは果たして
高ビーなセレブ学生たちを変えることができるのか

勢いで見ることを決めた#1でシンプルなストーリーが楽しくて。#2でぐっと話が進みもう#3は見るしかなかった。見るたびにすずらん大学のメンバーに愛着が湧いてきた3部作。最初は千秋楽だけ見る予定が、今まではネットでそんなに話題に上がらなかったのに、今回は評判が良いようで。そうしたらいてもたってもいられなくて増やしてしまった。見終えた後、本当にこの学生たちがもう見れないのがさみしくて・・・と思うほど。
勢いでぶわっと書いた感想なので支離滅裂だったり何重にもなったりしてますが、そのままにします。長いので注意。


話としては、今までは育った環境が違いすぎてお互いを理解し合えなかったセレブ学生とへたれ学生。しかしヘタレ学生の素直に優しく、本当に友達を思う心に触れるにつれ一人また一人と心を通わせていく。しかしセレブのリーダーマサヒロだけは最後まで受け入れることができず。その上自分だけ「両親に愛されていないんじゃないか?」という疑念と友達への嫉妬心から孤立してしまうが、ハジメの母親や親友であるシンゴの言葉に心開きセレブもヘタレも貧乏も関係なく友達に。そして今まで自分たちを温かく見守ってくれていたシュウジ先輩と別れることによって精神的にもひとつ大人になれた8人でした。と、こんな感じ。


とにかく今回はマサヒロ役のはんにゃ金田さんですよ。#2で両親に誕生日をお祝いしてもらえない寂しさを本当上手に表現していたと思ってて、今回どんな表情を見せてくれるのかとても楽しみでした。親から愛されてないんじゃないかと思い、他の友達がストレートに愛されている分嫉妬して、羨んで、きつく当たってしまうという役柄からか前回感じたキラキラ感が感じられなかったのは意識してそうなっていたのなら凄いし、ナチュラルにキラキラをオフしているのなら奇跡的な役者だと思うよ、金田さん。ハジメちゃんのお母さんから「大事なものはひとつでいい」「母親って言うのは離れていても、ちゃんと子供のことはわかってるんやで」と諭され、貰ったおにぎりを一口食べたと単に涙が溢れて。そのおにぎりから「母の見えないけれど、とても大きな愛情」を感じられたんだろうね。それがとても良く伝わってきた言いシーンだったな。今回はマサヒロで一杯泣かされた。


でも最初に涙してしまったのはハジメちゃん。#1ではすぐ泣いて、何事にも自信が無くて。今回もアキラに「ハジメちゃんは幼すぎるよ」といわれるほどだったのに、エミとタクヤとのシーンですよ。大好きで憧れのエミのため、エミが幸せになるならばとタクヤに「エミちゃんとやり直してあげて欲しい」と頭を下げて頼めるようにまで成長したのが嬉しくて。完全に母心ですよ。そんなハジメちゃんを暖かく迎える友達たち。そして「泣かないよ」といじらしいハジメ。もう涙腺刺激されっぱなしでした。そして素敵だったハジメママとのシーン。#2のOPで、母親に手紙を書くところがとても好きでして、どんな素敵なママなんだろうとわくわくしてたら本当に素敵ママで。この小堀さんが本当にいいんですよ。小堀さんのオカン役にはずれなしです。自分の子も、友達も同じように心配して見守ってあげる。こんなママだったら「お母さんのこと、大好きなんだ」って胸張って言えるし、マサヒロの心を動かすことができたんだろうな。


天狗に関しては、アキラの成長具合がとても良かった。最初は「今度こそみんなをひとつにまとめる!」って意気込みだけが先走って、セレブとの対立になってしまっていたのに#3では周りをよく見て、本当のリーダーシップが取れているのが素晴らしいなぁと。それに比べてツヨシは(笑)ダンスは回を重ねるごとに無くなり、セレブ内での立場ももういじめられっこの範疇を逸脱するほど。でもちゃんとフォローが入って、幼馴染内でのノリっぽくなってたのは凄いなぁ。ヘタレ組が本当に親身になってニット帽を一緒に探してくれたときのなんともいえない戸惑った表情が良かったなぁ。


チョコレートプラネットに関してはずっと安定感ある芝居で。でもキャラクターは回を追うごとに私の中では愛着が増していって。#2でシンゴだけが「本当はいいやつらなんだ」って気付いているからこそ、マサヒロのヘタレ追い出し作戦に乗り気になれず、でも正面切って反対は出来ないからなんとか他の話題にすり替えようとしている表情がとてもいじらしくて。一番の親友であるシンゴが、マサヒロのところに残って語りかけるシーンがとても好きでした。「辛いときは辛いって言えよ。親友だろう」って、凄くありきたりな台詞なんだけど#2のシンゴとマサヒロが一瞬微妙な関係になったのを知っているからこそ胸に来たというか。あと、シンゴとマサヒロが昔の思い出を語るところで誕生日の件があったんだけどここがちょっとしたシュールな世界でたまらなく好きだった。「2歳になるのは俺のほうが早かったけど、次の年は負けてたよな」みたいなやり取りで。誕生日を迎える競争はまだ決着がついてないみたいなやり取りがたまらなくツボ。ケンジは今回は全部がツボでたまらない。「ちくしょー」って無駄に熱い叫びだけで笑える。ゲイっぽさをぽろぽろと小出しにしちゃうのが、ケンジがまたそれっぽく見えてくるんだよ。好きだったのは、ゴロウとシーン。怪我したゴロウを心配できる素直さが大好き。


ゴロウ役のキューティーブロンズの先川さんは本当一番変わったんじゃないかな。#1では個人的にも一度も見たことがない方だったので、ほとんど印象に残ってなかったほど。でも上にも書いた、ケンジとのシーンの後にヘタレ組がきゃっきゃしているのを、凄く優しい目で見ているのね。自然と笑みもこぼれて。ここが凄く印象的で。2回目見たときは、ゴロウばっかみてました。ヘタレ組のよさに気付く瞬間が見たくて(笑)ダンスもどんどん巧くなって、今回はヘッドスピンまでして。凄く練習したんだろうなぁ。ヒロシ役の小三郎さんもやっと演技に注目。実はとても良いことをぽろっといったりしてるんだよね。オカリナにばかり注目してたけど。


武内さんと2丁拳銃はこれまでは、率先して物語を締めている存在だったんだろうけれども、今回はちょっと大げさに言うのならば対等に演じていたなと。それだけ若手の皆さんの演技力の成長が目覚しかったです。
でもやっぱりぐっと来るこの3人の芝居。シュウジとユキコがお互いを思うあまりに素直になれない、大人ならではの恋模様に涙してみたり。ユキコの「これからも勝手に好きでいてもいいよね」という台詞が大好きです。お兄ちゃんの裕之臣も、これまでは蟻好き、基レイチェル好きなだけの学者だと思っていたら最後はびしっと決めてくれました。ユキコに「もうがんばらんでええ。これからは自分の幸せだけ考えてたらええ」って。裕之臣が急にお見合いに精を出し始めたのも、安心してシュウジについてアフリカに行かせたかったからなのかなと思ったり。ユキコはユキコで「私の生きがいとらないで」と言っておきながらも涙が溢れてしまう感じが凄くよかった。
以下自己満足
・最初のダンスシーン。普通にむちゃくちゃ格好いい。
・ニット帽の話を聞いてもらえない件。ツヨシのはみごっぷりに拍車がかかっている。
・ヘタレの登場にハジメちゃんの姿がないだけで心配。
ハジメちゃんの浮かれ笑いっぷりに爆笑。白目剥いてたよ!
・ケンイチ・リュウイチのコーナーが凄い好き。#2の「お歳暮何送るか迷う」歌も好きだったけれど、今回の「親孝行」は本当名曲。なにこの無駄に格好いい前奏!そしてボーカルパフォーマンスが秀逸。ここの件のシュウジ先輩の扱いが回を増すごとに雑になるのもいい。
ハジメママの土下座に伴う「外ですよ」の流れ。


#3は毎回がスペシャルだったようで。
・客入れ時からの生演奏。
・カーテンコールでのライブ。これが良かった。
<土曜日・夜>
1:親孝行
2:ハムの歌(#2より)
3:すずらんブギ
<日曜日・千秋楽>
1:親孝行
2:逢いたくて(2丁拳銃)
3:すずらんブギ
個人的にハムの歌が聞けたことと、「逢いたくて」が聞けたことが嬉しくて。特に「逢いたくて」は普通に凄く好きで、ライブで聴くたびに泣いてしまうんですよ。また歌詞がハジメちゃんの恋を歌っているように聞こえてきて、せっかく「親孝行」で盛り上がって乾いた涙がじわっと溢れてしまいました。それにしても千秋楽の「親孝行」の盛り上がりっぷりは凄かった。楽しかったなぁ。嶋井さんが煽ったらたぶんスタンディングになってたな。「一生分のザッザッザザザをここにおいていこうぜ!」本当楽しかった。


自分で#1行ったら絶対全部見てしまうとは思ってました。でもそんな予想よりも何よりも、見るたびに目に見えて巧くなっていく芸人さんたちを見るのが楽しくて3ヶ月通ってしまいました。全てのキャラクターに愛情が湧き、もうこれで彼らには会えないんだと思うとびっくりするくらいの寂しさが胸に広がる感じに自分でもびっくりしました。若手の皆さんの成長を感じた分、情も深まった気がします。だから最終章は誰が幸せになっても、誰が迷い悩んでも一緒になって感受してしまい涙が「ここでも流れるのか」と自分で自分にびっくりするくらいでした。ここまで見続けて本当に良かったです。せっかくここまで作り上げたこの「湘南すずらん大学物語」を終わらせるのはもったいないなと思うので、年に1回でも良いからSP的に公演してくれないかなぁなんて思います。
すずらんで成長したメンバーが、これから神保町のほかの班で活躍するのを楽しみにしたいと思います。演者、そして楽器隊みなさんお疲れ様でした。
追記(おまけ)
楽屋ブログを見たら、「親孝行」の歌詞が掲載されていたよ。読むとあのメロディが浮かんでニヤニヤが止まらない。
すずらん大学物語楽屋ブログ