神保町花月『東北ラブストーリー 〜ラブ・レターは突然に〜』

『東北ラブストーリー 〜ラブ・レターは突然に〜
脚本:小杉 四駆郎(劇団THEフォービーズ
演出:堀江 B面(劇団THEフォービーズ
出演:
チーモンチョーチュウ/ポテト少年団/カナリア
and 劇団THEフォービーズ
あらすじ(公式HP)
とある田舎町の大学を舞台に繰り広げられるちょっぴり切ない胸キュンラブストーリー

縁あって、土曜日昼夜2公演とも見ることが出来ました。感謝感謝。
ストーリーは本当にベタなラブストーリー。90年代の「ザ・トレンディドラマ」の曲をこれでもか!って盛り込んで、20代後半〜の人には「懐かしい!」満載でした。笑わせるところはとことん笑わせて、最後の最後にぐっと泣かせるいいお芝居でした。
もう白井さんですよ。完全あて書きでしょう*1。体が弱くて、ずっといじめられてすごしてきたのに好きな人のおかげで笑えるようになり、ついには本気になっていじめっ子に立ち向かうことも出来た。この感情の移り変わりが若干性急だった気もしたんですが、立ち向かっていく瞬間に目にスイッチがバチンと入ったのがわかってぞくっとしました。白井さんはMOMO-TAROのキジのときもそうだったけれども強い意志を感じさせる演技がとても素晴らしいと思う。そして初めて梓と手をつないだ、星を見ている表情がなんともいえない顔で。アホ満開の表情なんだけど、それがなんか凄く智也っぽくて。そうかと思いきや、梓と付き合えることになったデレデレした感じとか、気持ち悪い感じも絶妙。みんなの前で「(付き合ったら)これから何をしたいですか?」で土曜の1回目は「一杯ちゅっちゅしたいです」でとどまっていたものを、2回目では「一杯セックスしたいです」とド直球で(笑)これ白井さんだから笑えるんだよと思ってたら、続く岡田さん演じる梓も「私もです」っていうもんだから周りの芸人があわあわする始末。
でその岡田さん。プリンスオブ〜の時も本当にいい女優さんだなと思ってたのですが今回もすっごく良かったです。智也に対してものすごい上からものを言っているのに、いやみに感じさせないところとかいい。酔っ払って、嬉しそうに智也の好きなところを話す表情も良かったです。何よりポテ少&カナリアに仕込まれたであろうギャグの数々。「泣いてるかと思ったら・・・そば食べてました」とか全力でやっちゃうこの女優魂。フォービーズの女優は本当に素晴らしい。*2今後も神保町で見たいですね。
チーモン菊地さんは、抜群の演技ですよね。前半のダサいままちゃらちゃらしている感じから、本気で梓のことを好きになってしまったと気付いてからが絶妙で。好き過ぎて、智也とのタイマンで思わずナイフを手にしてしまうところとかその後のどうしようもない気持ちとか。梓に「俺じゃダメか?」と抱きすくめるところは、「あと5cm背が高かったら」と惜しかったですけど。智也の振りをして梓に手紙を書き続けたものの、結局梓を泣かせる羽目になってしまったと涙を流す姿にぐっときました。
そしてそのあとの伊藤さんですよ。もう「僕を忘れて」で大好きになった女優さん。お芝居が半端なく上手で大好きなんですが。彼女演じる智也のお母さんが、泣き崩れる梓に優しく「智也はこんなに愛されていたのね」と語りかけ、涙が溢れる様子でもうこちらの涙腺も馬鹿になってましたよ。少ない出番で、メイクでふけさせているわけでもなくそのままの存在でちゃんと智也の母に見えてくる凄さ。カーテンコールで伊藤さんの役作りの凄さについて話していたのが印象的だったので。出番のないときは、舞台裏でモニターで芝居を見ている伊藤さんがぼろぼろ泣いていたとか。伊藤さん曰く「モニターで見ている間に、白井さんが本当の息子に思えてきて、この子は死ぬ前にこんな楽しい思い出をつくれたんだなと思ったら涙がぼろぼろ出てきた」とか。それだけで伊藤さんの女優としての素晴らしさが垣間見えます。ただその日のカーテンコールで白井さんは、MOMO-TAROの時のキジの衣装を上半身裸で身にまとい、手にはご丁寧に爪付グローブを装着していたまま『ママぁー』と伊藤さんに甘えて、断固拒否されてました(笑)
父親役の一ノ瀬さんは本当あったかいお父さんで、やわらかい印象。母親の悲しみもわかるし、でもまだ智也の死を知らない梓も気になるし。本当優しい。
カナリアポテト少年団内藤さんはもうやりたい放題。ボンちゃんに関して言えば、5日目とは思えないほどの台詞のたどたどしさ。同じ人間が「4.5階の狂気」で主役張っていたとは思えません(笑)同じく同じ人間に見えなかったのが安達さん。基本過去2回の神保町で人殺してばかりだったので、ちょけてるだけで新鮮。「チャームポイントはヘルニア!」とか、ちょいちょい内藤さんと大阪のオバハンぽいことしてたりで楽しそうでした。
ポテト少年団キク様は、もうねなんでしょ。あのにじみ出るナチュラルなダサさ。90年代、劇中でのかなり遅れた時代背景が似合うんですよ。そしてキク様の口から出る「ロッキノン、ロッキノン♪」の面白さ。アムラーの薀蓄を誰もついていけないくらいの勢いで喋る感じ。どれもこれもがツボ。そしてデスコ*3シーンで地味にひたすらターンテーブルを回している様。最高でした。
中谷さんは、いい役だったなぁ。中ちゃんぽかったし、優しくていい役だった。一生懸命、智也のこと隠しているんだけれども全然隠しきれてない感じとか。
フォービーズの男優さんは皆さん初めて拝見する方々でした。特においしいジャガイモ作る人*4が、智也と梓のことを知っているんだけれど、雄介になかなか言い出せずにいるところとか。友達を思うがゆえに、智也に手を出してしまう行き過ぎた感じとかが凄くいい。あとエロ本隠してた友達は、ずっと正解を演じてて。智也を昔はいじめてたけど、今は間違えてたと思ってるっていえるところとか。梓が雄介を追っていこうとするのを止めるところとか。


前半がつがつ笑わせてもらって、星を見るところとかでくすぐったくなるくらいきゅんとさせられて。あ、でもこのきゅんという気持ちは、智也を白井さんが演じているっていう白井さん自身の持つキャラクターに由来する部分も多いけど。そしてたぶんみんなが智也を好きになった時に、悲しみを与える。私個人としては、泣くならとことん泣きたいほうなんで好きな脚本でした。最後の最後、ダメ押しのあの星空。あの綺麗な星空で、最後ぐっと感情を突き動かされた気がします。本当あれは素晴らしい演出だった。*5

*1:と思ったら、本読みの段階では安達さんと白井さんの役が反対だったとか。ありえない!と思ってしまうほど白井さんにぴったりだった。

*2:他のブログを読んだところ、最初のほうは「そば食べてました」のギャグのところが「なーんちゃってマッチョマン@パンチ浜崎」だったとか。

*3:間違ってません。

*4:役名失念

*5:ベタだけどね。