神保町花月『黄昏』

脚本:白坂 英晃(はらぺこペンギン)
演出:河村 由紀恵(テアトル・エコー
出演:
しずる/あべこうじ/ポテト少年団/ブロードキャスト/GO!皆川
岡田亜矢(劇団THEフォービーズ
あらすじ(公式HP)
俺は、ただただ、立ち尽くす。
これは、やり直しのきかない事実を、ただひたすらに実感する、少し苦めの物語。

記憶は忘却の彼方って感じなんですが、さくっと感想を。


私はこのお話が大好きでした。だからこそ今更感漂っても感想を残しておきたいなと。
自分が学生時代部活というものを全くしていなかった、帰宅部だったのでこの話100%受け止められたのかと問われたら答えは「いいえ」なんですが経験なくとも余りあるくらい引き込まれたのはひとえに演者の力によるんじゃないでしょうか。
ようやく見ることが出来た主演でのしずる。とにかく池田さんには脱帽です。なんて繊細な演技をするんでしょうか。普段の舞台での、破滅的な壊滅的な感じとは真逆なのがもう驚きを通り越してただただ感動するだけです。すごく素敵で、確信を付く台詞をふわっと言葉にするのが本当に巧いなぁって。何度も池田さんの台詞でなかされそうになりました。自分のことよりもまず人の為に、「誰もわるくなんてないでしょう」って言える大きすぎる器が本当にナチュラルに感じられて、惚れそうになりました(笑)
その逆で、本当に器用に演じているなって思ったのが村上さんで。前回の神保町「ZOO」で見たときは「本当はもっと出来るんでしょう?」っていう不完全燃焼さを感じてしたのが嘘のように、村上さんの持っている全てをぶつけているなって感じられました。前の学校でのヒミツを知っている人間が現れた時の表情、自分の好きな人が監督と不倫の関係と知ったときの表情、そして一人部室で涙をこらえながらもこらえきれずに泣いているところなんかは凄く心に響いて、涙が止まりませんでした。そうかと思えば阿部さんに菊地さ共々無茶ぶられているときの嬉々とした表情も魅力的で。そうか、村上さんは魅力的だったんだって気付かされる感じ。役柄としても、前の学校での事件はあったとはいえ好きな人に「メジャーを目指して」といわれたことを、自分の怪我を押してまで実現させる熱さがあったりと本当に素敵な人を演じてたんだなと。
あべさんはもう安心感の塊のような方なんで、期待しかしてないんですけど今回も軽く上回ってもらっちゃって。中盤までは調子のいい監督なんですよ。ただただちょけている。後輩相手に楽しそうに無茶ぶってますしね。それが、マネージャーとの関係が明るみに出てからの演技が本当に憎らしいほどで。「あいつの言うことなんて信じるなよ。全部嘘なんだから」のようなニュアンスの台詞があるのですが、この時の表情が本当に残酷で冷酷で。あんなに楽しかったのに、こんなにも一瞬で悪役然となりますか!ってくらいで。やっぱりこの人は期待して余りある演技を見せてくれます。
ブロードキャストは初神保町。ネタも数えるほどしか見たことなかったので、まっさらな気持ちで見てたんですが凄く良かったです。吉村さんの演技が特に。あの頃の思いを抱えたまま、全く満足ならない現状にイライラが募り爆発したときのあの叫びは、そんな経験がない自分にもずしんと胸に伝わってきました。あのシーンは本当に良かった。房野さんは唯一の年下役立ったんだけど、これが弟らしさがぴったりで。なんでしょうね、持っている空気が義弟なんですよね。うまく言葉にならないんですけど、凄くはまってたんです。
ポテト少年団はまー菊地さんに関しては、学生時代は先生にしか見えなかったんですけど(笑)大人になってからのキャプテンとしての立ち位置は凄くしっくりきてて良かったです。中谷さんと内藤さんもやんちゃな子供がそのまま大人になった感じでよかったなーと。
皆川さんはちょっとしか出番なかったんでなんともいえないですけど・・・。
岡田さんは可愛すぎでしょう(笑)可愛いだけかと思ったら、監督と不倫しててって驚きがリアルだったので本当はまり役ってことですよね。また今回もポテ少のギャグやらされてましたけど、2回目ということでこなれてましたね(笑)
ストーリーとしては派手さはないけれども、とても好きでした。なにより池田さんの役柄がたまらなく好きで。じんわりと「いいものを見たなぁ」ってかみ締めたくなるような噺でした。