愛の賛歌2009〜その愛を見て僕の愛は嘘くさくなる〜

家城さんの作品の中で1・2を争うほど好きなお話、「愛の賛歌」の再演です。
正確に言うと再々再演です。
今回はキャストが新しくなったり、一方で主要キャストが初演メンバーだったりと
フライヤーを見たときから楽しみで、楽しみで。
会社を定時きっかりにタイムカードを押し、新宿からタクシーで。
タクシー運転手に道順が上手く伝わらず、タクシー使ったのに走る始末。
でもおかげでちゃんと最初から見れました。
見終えてからはもう、本当にほわほわしちゃうくらい幸せでたまらなかったです。



とにかく良かった。やっぱり家城さんの書くお芝居、大好きだわと実感。見終えた後の心の充実感が半端じゃなかったです。この後に次のライブを入れたのをちょっと後悔したくらい。お友達と一杯語りたかったな。私が過去に見たのは2004年のオトメメンバージョンでした。初めて見て「なんて素敵な愛の話なんだろう」と感激してから約5年。今回も色々な愛の形に感動。しかし家城さんがこの話を書いたときは24歳だって言うんだから本当恐ろしい人です。家城さんの脚本らしく、本当に「ここはなくても全然話進むわー」って思うシーンがたくさんあるんですよね。でもその回り道があるからこそ、主題である「色々な愛の形」が見えてくる後半がぐぐぐっと盛り上がるのかなと邪推しちゃいます。前半の暗転をたびたび挟み込んで各役柄の紹介を含んだ展開から、物語がめまぐるしく変わる後半へと続く演出も大好きです。いろんなバージョンでの「愛の賛歌」がまたその場面、場面とヒットしてて良いんですよね。去年神保町で「籠の城」を見たときも感じましたけれども、本当に私は家城さんの演出が大好きみたいです。あー幸せ。


中尾さんのオカリナは年を重ねて、本当に説得力が増したなと。ナースに「自分の愛を伝えるためだけ」に100日間花を運び続ける姿が若くないからこそ凄みを増したというか。最後のほうの満身創痍でナースに「君は何か勘違いをしているね、僕は今、すごく、幸せなんだよ」と優しく語り掛けるオカリナも良いのですが、実は30日くらいの淡々と花を運んでいるようで、でも「LOVE」と叫んで願矢を放った時の心の奥底は愛が満ちている感じなオカリナが好きだったりします。後は耳有りや素とのやり取りが好きなんです。台詞ですきなのが「僕はバカなんです。でもバカなりに考えて考えて、『考えるのやめよう』って。余分なもの全部なくしたら、最後にひとつだけ残ったんです。愛が残ったんです。愛だけが、残ったんです」もうこの中尾さんの表情が本当に素敵で。何もいらない、愛だけでいいって気持ちががつんと伝わるんですよ。だからこそ、この言葉を聞いた足長もブタ子の元へ急いだんだろうしね。地味ながらも(笑)やっぱりオカリナはれっきとした主人公なんだなー。そして純粋の塊であっただろう21歳のオカリナも見てみたかったなと、「愛の賛歌」を見るたびに思うのです。


ナースは自分が見た時の家城ナースは、色々ガツンと来るものがあったのでちょっと心配だったところです。キャストが発表になった時点では「伊藤さんかな?」と思っていたので、いざはじまって見たら松崎さんだったので意外。でも松崎ナースはちゃんと綺麗なヒロインでしたね。これは新鮮でした。ボンボンを手玉にとって、実はオカリナと・・・。ていうのが納得の行く美しさですから。雪降る中オカリナが、伯爵邸前で倒れこんだときのオカリナを見る目がとても良かったです。お話を知っているからこそ、その時点でこのカップルの行く末と隠さねばならない愛情に涙が出てしまいました。ナースのひとり語りのシーン、前は家城さんが無駄に(笑)セクシーだったので、今回の松崎さんの切なる語りが本当にベイビーを残して死に行く母親の無念が伝わってよかったです。


実はオカリナとナースよりも私が好きなカップルが「足長おじさんとブタ子」なんです。乙女バージョンではここまで泣かなかったのに!ってくらい泣いてしまったのは池谷ブタ子の可愛らしさに他ならないでしょう。理解はしがたいところもあるけれども究極の愛情でしょ、「好きだから、一番美味しいときにあなたに食べてもらいたい」って。また菊池さんが本当に好きなんですよ。ビッグエッグ伯爵に仕え、責務に苦しみ気持ちとは裏腹にブタ子に辛く当たってしまう。ブタ子もいっときの気の迷いで耳有りと関係を持ってしまう。そのすれ違いがどんどん大きくなって、しまいにはブタ子は自分を耳有りに差し出してしまう。ブタ子の家まで来たのに、血まみれの耳有りが出てきた瞬間の足長おじさんの表情が本当に胸を打って。悔やんでも悔やみきれない悲しみが見てて辛かったです。本当にあのシーンが、見てて本当に切ないんだけれども凄く好きです。ブタ子も本当は、もっと肥えて美味しくなってから、足長おじさんに食べられたかったろうなって。*1初めのほうの二人でブタ語でいちゃいちゃするところも本当に、菊池さんと池谷さんの人柄込みでほんわかして、好きなんですよね。


ボンボンさんは今回は関町さんとうことで楽しみにしてたひとつでした。心底「嫌われている」感溢れる言動がナイスです(笑)褒めてます。あんなに腹から発声する人、笑っちゃいますって。オカリナに対するいやみな感じも良かったし、最後ナースに裏切られたとわかって怒り心頭な姿も良かったです。しかし関町さんってタイツ+ハーフパンツが似合いますね。恰幅もよろしいのでボンボンさんがぴったりでしたよ。あの異常なまでの肌つやも「良い暮らししてんなー」って感じで。黄身お嬢様は前回は奴姉さんだったので、オリジナルにワクワク。デッカチャンが最後には可愛く見えるマジック。ボンボンさんへの愛情表現が、お腹をバウンバウン打ち付けるというもので、これまた受けている関町ボンボンがむちゃくちゃ良い表情なものだから。オカリナへの「あんたを見ていると、不安になる」って台詞がとても好きです。あんなに一心に自分の愛情を見せるために花を運ばれたら、ボンボンはここまで愛してくれているのかと不安になるのも納得ですよね。


裏の主役「素」と「黒子」。これまで可愛い可愛い堀内さんが担ってた黒子を果たして田所さんがどこまで可愛く演じるかが個人的見所だったんですが、なんすかあの可愛らしさは!はっ!騙されているって何度も思いました(笑)あのずんぐりずんぐりな黒子衣装で、きゃっきゃーとジャンプをピョンピョンされたらもう。ずるいっすよーって感じです。素も押見さんがふくよかになられたのでますます、素のやさぐれた感じが引き立って。見終えた直後は「素と黒子ってあんなに早く仲良くなったかしら」なんてお友達といってたんですが、今回はいちゃいちゃっぷりに拍車がかかってそう感じただけの模様。しかし黒子に泣かされるとは思いもよらなかったです。終始「ぐしゅぐふぐしゅぐふ」と何て滑舌?状態からの素との別れのシーン。そして隣に遠藤逸人を従えての「ありがとう」。くやしい!田所さんに泣かされるなんて!(笑)派手子は当て馬ですよね。かわいそうに!!(笑)


奥様と旦那は今回最もキャラクターが変わったところでしたね。斉藤さん、本当濃過ぎ。でもって斉藤さんに負けない伊藤さん(職業:女優)ってなんなんですか!隙を見ては歌う旦那。負けじと乗っかる奥様。新しい。しかし本当に伊藤さんって女優は怪物ですね(絶賛中)あの斉藤さんに負けない存在感。ふと見せる切ない表情。愛されても愛されても不安な感情。そしてラストに納得させられる奥様と旦那(本物)の愛。


神父と旅のコックの愛情?友情?のあの無駄な(笑)やり取りも健在。あれだけ随所でリアクションのやり取りをしてからの、合コンでの他の誰かとのリアクションのやり取りを見て泣きながら出て行く旅のコックが良いなーと。ジャングルポケットの大田さん、実は苦手な芸人さんだったんですが「指選手権」辺りからぐいぐいツボです。なんすかあの人の面白さは!シューレスさんはもう安心しきってみているので。


ドクターは噂によると家城さんが「頑張れ!」の意味をこめて出番を増やしたとか。これ前の歴代ドクターは本当にキャラが濃い人ばかりで、これはプレッシャーだったでしょうね。武山さんて声がエロいでも色っぽいでもなく、いやらしいですよね(笑)


最後に耳有り法一のオコチャ。何度願矢が刺さっても痛いけど平気な耳有り。ちょっと足りない感じが、よりオカリナを心配している気持ちがダイレクトに伝わってきて耳有りの台詞はどれも心に響きます。最初はオカリナを心配して、花を取りに行くことをやめさせようとするけれども、「もう邪魔しない、応援する」とオカリナの『愛』を応援する気持ちにもぐらり。ブタ子を食べて「おいしかった!ご馳走様」とブタ子宅を出た瞬間、悲観にくれた足長おじさんを見て動揺しながらも、ブタ子の指についさっきまではまっていたであろう指輪を渡し「ごめんね。でも美味しかった」と無邪気に言ってしまえる。その無邪気さと、足長おじさんの悲しみのコントラストがあまりにもくっきりしすぎてて、悲しくて苦しくてどうしようもなかったです。


本当に本当に大好きなお芝居。平日開催じゃなければ、もう1回くらい見たかったです。台詞の隅々までどれもこれもが素敵で、反芻したくなる。結構ごちゃっとした演出なんで見終えたらぐったりしちゃうのに心地良い。家城さんの作る作品は、ファンタジーで見終えた後もずっとふわふわとその世界にとどまってしまう、とどまりたくなるのでちょっと危険です。また数年後、新たな形で見せて欲しいなと、切に願います。やっぱり24歳であの台詞の数々は怖いくらいだなと再確認。



*ここからは個人的趣味です。観劇後お友達とおしゃべりしながらルミネに向かったのですがそのときに、数人が過去の「愛の賛歌」を見ているのですが全員違う回を見ていたという奇跡が。各公演で誰がどの役?談義に花が咲いたのでちょっとネットの世界で探してみましたよ。以下、過去の「愛の賛歌」キャストです。

役名 2001(ベルベ時代) 2002(ルミネ) 2004(劇団乙女少年団 2009
オカリナ ノンスモーキン中尾 ノンスモーキン中尾 ノンスモーキン中尾 ノンスモーキン中尾
神父 あべこうじ あべこうじ ポテト少年団菊池 シューレスジョー
ナース 牛島康子 牛島康子 家城啓之 松崎映子
ボンボン 井上マー パンチ浜崎 コンマ二センチ竹永 ライス関町
足長おじさん ノンスモーキン菊池 ノンスモーキン菊池 コッセ ノンスモーキン菊池
ブタ子 犬の心池谷 犬の心池谷 ミルククラウンジェントル 犬の心池谷
黄身お嬢様 デッカチャン デッカチャン 椿鬼奴 デッカチャン
旅のコック (不明) ノーパンチ松尾 ミルククラウン竹内 ジャングルポケット大田
先生(ドクター) パラメ松尾 増谷キートン ピーナッツ中谷 ジャングルポケット武山
旦那(古館) カリカ カリカ 猪俣こーしょー ジャングルポケット斉藤
奥様 カリカ家城 リンダ リンダ 伊藤真奈美
耳有り法一 たーちゃん たーちゃん オコチャ オコチャ
犬の心押見 カリカ家城 犬の心押見 犬の心押見
黒子 コンマ二センチ堀内 コンマニセンチ堀内 コンマ二センチ堀内 ライス田所
派手子 - - 大西ライオン・こうのゆか 元気たつや
幽霊の 岡里奈 - うみのえりこ ポテト少年団内藤 -

きゃー、↑こういうの初めて作った。わー楽しい。

*1:芝居を見ずにここだけ読んだら、頭おかしい人みたいだ・・・(笑)でも本当に良いシーンなんですよね。