神保町花月『ホントの自分』

脚本:山下 哲也
演出:白坂 英晃 (はらぺこペンギン)
出演:
LLR/イシバシハザマ/マキシマムパーパーサム/ブレーメン
まごころしたごころ/出雲阿国/由梨
あらすじ(公式HP)
離島に住む記憶のない男
皆既日蝕の日を境に、もうひとりの自分が現れるようになる
それはホントの自分?
それとも・・・

前回のLLR班が若干残念なお芝居だったので、あまり期待せずに・・・と思いながら見に行ってきました。楽屋ブログで福田さんが神保町花月では初の役柄と聞きちょっと楽しみにしてたのですが、見てみると思いのほかの良い役で思わず当日券でもう1回見ることに。2度見て思ったのは、このお芝居1度目よりも2度目のほうが楽しめます。


話の筋としては開演の際に流れる曲にもあるようにDrコトーのような離島のヒューマンドラマ化と思いきや、医療サスペンス的な要素もありで。細かいことを気にすればクローンのくだりに気にかかる点があったり、元村長が島を離れた明確な理由とかふわっとした点はあったしろ、とても楽しめたお芝居でした。


福田さんが神保町初と言われた役柄は、一人二役でしたね。本当良い役を貰ったなーって言うのが一番の感想。ファンやってて良かったです(笑)拓先生(白福田)の時の本当に島民に親身になって接していたり、千佳ちゃんと二人微笑みながら貝を耳に当てるオープニングはいつもの福田さんのイメージを真っ向から覆す感じでとても新鮮でよかったです。結構神保町では福田さんって好青年を演じることが多いですよね。でも拓先生は良い人過ぎて逆になんか本当は悪い一面があるんじゃないか?って妙に勘ぐってしまったりも。だから日食のお祭りの日に現れるであろう「本当の自分」、失われた記憶はきっと悪事であるに違いない!って思ってましたから(笑)ちゃんと拓先生はずっと良い人のままでよかったです。だからこそ、眞吾(黒福田)が映えたと。個人的には黒福田の演技のほうが好みでした。あの親に裏切られたと腐って、酒に女にとダメな感じがなんとも。しかしどちらの役柄の時も、「なんでなんだー」と崩れる演技はね・・・大根・・・。このシーンだけはこういう慟哭が上手な役者に・・・!と思ってしまいましたが。いや本当見てよかったですよ。あ、千佳ちゃんとのキスシーンに客席がザワっとなることに笑っちゃいそうになりました。なにその反応!と思って。福田さん、アイドルだなー(笑)
伊藤ちゃんは主演作品でもこれくらいがいいですね。2度目見たときは、島での拓先生への接し方が本当に優しいのにじーんとしました。酔っ払って大法螺大会に参加している感じも、拓先生から「結婚したい人が居る」と聞かされて我に返る表情も、眞吾に本当のことを話せない葛藤も良かったです。


今回主役の次に良いなーと思ったのが硲さん。前に「カーテン」で見たときも凄く演技が好みでまたイシバシハザマはみたいなと思ってたところですよ。今回の国男がまたええ役ですね。最初1度目見たときは、拓先生の友達で「海が好きー」とおちゃらけているだけだと思ったのに本当は海にトラウマ抱えてるっていう伏線があっての行動だって分かって。それが分かった上で2度目見るとね、もう最初の「海が好きー」「かに!かにも好きー」が泣けてくるんですよ。そういって克服している姿に見えてくるから。本当に硲さんの演技が細やかで、ちゃんとそこも表現しているんですよね。本当ええ芝居しはる。
同じく石橋さんもかなり良かったですよ。やさぐれたおっさん役が本当に良くお似合い。あの世捨て人的格好に、爪楊枝加えて現れるのがよく雰囲気に合ってて良かったなー。若干寛治が最初に島を出た理由が分かるようではっきりしないのでしっくりこないとこも合ったけれども。本当ぴったりな役だったなーと。


一番泣かされたのはDJヤシマですよ。岡部さんの演技も好きなんですよねー。こう考えるとこの班結構好きな演技をする芸人が揃ってたな。ヤシマは中盤までの飄々とした、島で唯一村長を呼び捨て出きる感じとかがほんわかしてていいなーとか、自由奔放な感じも良かったんですけれども、なんといってもラストの長台詞でしょう。拓先生を守ったあの放送と島の音は本当にぐっと胸を打つものがありました。もう中盤まであんなだったヤシマに泣かされるなんて!!ですよ。
直道・のぞみ夫妻もかわいらしい夫婦で素敵でした。若干阿国の演技が苦手なので残念でしたけれども、最後のヤシマの台詞のシーンで国男の感謝の言葉が流れたときに、それを聞きながらちょっと照れくさそうにはにかむスターの笑顔が凄く良かったです。


長澤さんはまず見た目で本当におじいちゃんなんだもの、ずるいよ。あんなに完成度の高いおじいちゃん初めて見た(笑)また長澤さんの持っている雰囲気がやわらかいものだから本当に由梨がお孫さんに見えるこの奇跡(笑)
地味につよしさんの後藤の役も好きでした。飄々として、かつ大法螺大会では良い感じに翻弄されてて。つよしさんのもっている任がぴったりで。途中から「誰やと思います?」くい気味の「後藤です」のくだりが楽しくなってきちゃって。なかなかのキーパーソンでしたね。


由梨さんは「URAKEN」に続いて見たのですが、一途に拓先生を思う感じが伝わってよかったです。儚げなんだけれども、眞吾に対峙する時の思わぬ強さとか。また見たい女優さんです。


というわけで今回のLLR班は物語も楽しめて、芸人さん個々の演技も堪能できたので大満足でした。2回見て本当に良かった。これで心置きなく「落花生たち」はなかったことに出来ます(笑)