劇団乙女少年団第10回公演「オカマーズ7」

書いてたらすっごく長くなったので畳みます。

作演出 カリカ家城


カリカ家城


前田ししょう
カリカ
POISON GIRL BAND阿部
コンマニセンチ竹永
デッカチャン
オコチャ


工藤史子
コッセこういち
ノンスモーキン中尾


ガリットチュウ熊谷


THE PLAN9浅越

「愛する家族の為、戦地に赴く」というのが、「家族の為、芸人を引退する」
という前田ししょうの現実とリンクして、演者も客席も涙。
最初からこういう結末だったのか、前田ししょうの引退を受けてのこの結末なのか。


オトメメンらしいオープニングや歌やダンスは一切無く
メッセージも『前田ししょうへの餞』な印象の今回のストレートな舞台。
多くの芸人から慕われた、ひとりの男の晴れの門出をこういう形で
送り出すなんて、なんて粋な計らいをする人なんだ、家城さんって人は。
この話は同じモチベーションで再演は絶対無理だと思うから
この時間この場所で見れたことを本当に感謝。


■マエダ(前田ししょう
バーであるバイトをしながら家族を養っている、家族思いの36歳。
しかし平和な日々から一転、召集命令と特攻命令によって人生を左右される。
仲間が「オカマ」となって除隊を目論む中、「家族の為、男として、パパとして」
戦地に赴くことを決意する。
出兵時に一人一人と言葉を交わすのだけど、最終日はせりふではなく
前田ししょうからの本当の感謝の言葉であり、仲間からの労いと門出を祝う言葉だった。
涙で高ぶる感情を、深呼吸して一言一言大切に発する姿が忘れられない。
本当に格好良く見えた。
何かを決意した男の人って、こんなに凛凛しいんだなって。


■ヤシロ(カリカ家城)
一番最初にオカマになって、ちんこも取っちゃって、除隊になった人。
「林さーん、ピッチサイドの林さーん」の言い方が好き。
彼だけは、特攻へ行くマエダさんに特に言葉はかけていない。
でもこの話全部が餞の言葉なんだろう。
最後、演者みんなが泣いている中、ひとりじっと上を向き耐えている姿が印象的。


■ハヤシ(カリカ林)
一度は除隊の手段をオカマに求めるのに疑問を感じるも、特攻命令の現実に
一瞬でタイトなオカマを目指す自衛隊員。
民間から召集されたにもかかわらず、すぐに自分の上官になったマエダに
いい印象を抱かなかったが、特攻への決意を固めた彼に
「やっぱりあんたのこと、大っ嫌い」とCDを差し出す姿の裏側に
心からの愛情を感じさせる演技に涙。
しかしオカマなりかけの時の「トランクス(?)に編みタイツ」姿には
やられました。+チェーンつきのめがね。
インテリオカマですよ。最終形もベレー帽に女性の軍服って!


■タケナガ(コンマニセンチ竹永)
序盤は普通にウザイ竹永なんだけどラストは前田チルドレンの共通の想いを
一手に引き受けたと言うか。
感情の一切を押し殺すことなく、全力で体を震わせながら
「いってらっしゃい」と送り出す姿はもう芝居じゃなかった。
心に直に響く言葉だった。


■アベ(POISN GIRL BAND阿部)
自称DJという名の通信部勤務で、前田の義理の妹ふーみんに一目惚れする男。
大声を出したり、何かに一生懸命になることを面倒くさく、恥ずかしいと思っている彼。
こんな男が、前田さんの姿を見て変わる。
1回目見たときは、アベの「(特攻)行けー」の絶叫で涙がぼろっとこぼれた。


■ブー(デッカチャン
基地内の食堂で働いている為、戦地に行くことは無いのだが
少し知能が送れているためになぜかみんなと一緒にオカマになった。
昔一度だけ関係を持った風俗嬢との間に子供が居るが、裁判で会うことを禁止されている。
そんな自分の子供への思いを、前田に託す。
2回目に見たときは、ブーの背景が分かっている分切ない。


■トミタ(オコチャ)
もっとも愛国心が強く、日本のために戦うことを喜んでいたのだが
身体的理由で早々と除隊になる。
そのショックの為、少々頭が可笑しくなるが
「日本のために戦い、死に行くこと」を善しとしていたのが「人間、生きているのが一番」
と除隊となる仲間を「おめでとう」と受け入れる。
トミタ「ししょう。ししょう。もっと色々教えてください。」
マエダ「残念。もうししょうではありません。ただの男なんです。
    ただのパパなんです」
この台詞は本当に彼らの心の声なんだろうな、と。このあたりから
ずっと涙を流しつづけていたオコチャが印象的で。


■アサゴエ(THE PLAN9浅越)
ひとりエリートコースを歩む自衛官。開戦の知らせも、除隊となったオカマの噂も
特攻命令も彼から知らされる。
日替わりのオカマの愛用品やら、しつこすぎるマエダの顔芸に笑いが止まらない等
印象の変わること多数。ケサランパサラン然り、組曲に23区然り。
「オカマになるんやない、女にならんとあかんのやわー」と目覚めた瞬間から
京都弁になったり、オカマになる前から女装癖があったりとなかなかおいしい。
オトメメンの稽古期間中くらいのお付き合いであるゴエさんが
あの冷静なゴエさんが、最終日に涙をこらえられず搾り出すように台詞を
言っているのを見てますます前田ししょうという芸人のすごさが身にしみた。


■オカマスター様(ガリットチュウ熊谷)
ベトナム戦争も体験したという、伝説の元軍人。
今はオカマとなってバーのオーナーをしている。
独特のまどろみ具合といい、ブーに抱っこされて脚がぷらーんぷらーんしてる様といい最高。
興奮するとなに言ってるか全く分からないところも。
その中で、あんなに灰汁のある「ガリットチュウ熊谷」らしさを感じさせないのは
すごかった。
ラスト、マエダを送り出すとき。
マエダ「お世話になりました」
マスター「怖くなったらいつでも帰ってきて良いんだからね」
最終日は熊谷さんがこらえきれなくてだまちゃったとき、
前田さんに「どうした??」とか言われてて。
「怖くなったら帰ってきて良いんだからね」って言葉が芸人ていうたぶん
一度入ったら心地よくて出られない世界から、厳しい社会に出る前田さんへの
本当に心からの贈る言葉なんだななんて思ったら今でも泣ける。


■ふーみん(チータダッシュボンバーショット工藤)
マエダの義理の妹。
アルバイトして家族を養っているマエダと結婚したがために
お姉ちゃんは不幸になったと思っている。
しかし「家族の一員として死にたい」という決意を固める義兄を見て
考えを改める。


■シンゴ(ノンスモーキン中尾)
バーの常連で、謎のゲイに襲われる。最後は吹っ切れる。
完全サイドストーリー役。
アクセント要員。最後ちんちん取っちゃったヤシロに
「俺がちんちん食べてやるよ!」と満面の笑顔で言うのにはそれまでの
号泣も吹っ飛ぶよ。


■「  」(コッセこういち)
謎のゲイ。
噂の「除隊になったオカマ」。真実はゲイだったけど。
「股間に響くお酒下さい!」
「誰でもいいから、やろう!」
「コラボしよう!コラボってぶち込むってことね!」
等々をはきはきとさわやかに言い放つ。
オカマになろうとする男たちから見たら「悪魔」


次回オトメメンはなんと来年。
これまでが短いスパンで、ありえない本数の公演を打ってきたんだから
ひと休みってことでしょうか?
年明けすぐらしいので、それを楽しみに。
というかその間にカリカが何をしてくれるのかがもっと楽しみ。