神保町花月「THE MOMOTARO」

脚本:堀江 B面
演出:高梨 由
出演:犬の心/あべこうじ/井上マー/チーモンチョーチュウ
こりゃめでてーな/キャベツ確認中/チョコレートプラネット/ゆう太だい介
阿山 真也/水野 以津美
あらずじ(HPより)
今明かされる「桃太郎」の真実!!
誰もが知るあの桃太郎の、誰も知らないストーリ−・・・。
愛と勇気と憎悪が入り混じる
新感覚おとぎ話『THE MOMO−TARO』がここに!

2回目にして、千秋楽。楽しんでまいりました。
この日の為に一週間仕事も必死のパッチで。
渋谷駅と、神保町駅をほうほうの態で走ってなんとか
「桃から産まれた、桃太郎〜」から見ることができました。
先週書いた感想と被ることもあるでしょうけれども
感じたこと、そして琴線に引っかかった台詞など。
・千秋楽にして、まさかの座長の出トチリ。
・カーテンコールをあからさまに要求する座長。
・斧役のオコチャさん。マーさんの代役だったので。
・あべさんの不意の涙に、桃太郎もらい泣き。それをみて客席ももらい泣き。
・カーテンコールの雰囲気から見てとれる、カンパニーのすばらしさ。


池谷さんは前回以上に殺陣が神々しかった。怒りをあらわにしての鬼気迫る殺陣に魅せられた。そして燃えさかる家の前で「これが人の子かー」と悲しみと怒りの入り混じった表情がたまらなかった。そして、10年前の事件の真相が分かった瞬間の悔む表情と回想の言葉の数々。「おじいさんとおばあさん、いやお父さんとお母さんのためです」「お美代、お美代」と呼びかける時の表情、これが本当の桃太郎。


犬の押見さんは見るたびに、桃太郎への忠誠心そして最後まで元のやさしい桃太郎に戻るだろうと信じてやまない心があふれ出てて。それなのに、「この屋敷から出て行け」と言われてしまった時の表情が切なすぎて。「ひとりでは生きていけない」「心さえ繋がっていれば家族なんです」桃太郎が、自分の中の鬼にうち勝ってお美代と分かり合えた時の犬の表情が本当にうれしそうで。そして桃千代と遊ぶ犬が本当の老犬のようで、微笑ましかった。


このお話の中で一番李太郎に感情移入して見ていたかも。特に2回目見ると、李太郎の本心を知っているので初めて桃太郎達と対面した時から涙が溢れてしまって。李太郎がもう少し早く産まれていたら、一人でもいいから李太郎を信じてくれる人がいたら・・・と考えると。最期、本当はたった一人信用していた桃太郎に刺されてしまった時は桃太郎を思って「お前と俺は変わらないんだからな」「最初からお前なんか信用してなかった」と言ったのかなと。そして2回目見ても「きびだんご、食べたかったな」の一言には涙が止まらなかった。李太郎に感情移入しすぎて、最期を迎えた李太郎の亡骸がそのまま放置されているのが悲しすぎて。桃太郎に最後くらい救ってほしかった・・・。犬と「試すか?」と対峙した時の強い目つき。「兄貴、人の子を信じるな」「クソ女か・・・」と言った時の冷酷な目。「お前のそういうところ・・・嫌いじゃない」でうわぁって泣いてしまった。


マーさんの九兵衛は、1度目見た時は周りの主役がすごすぎてなかなか目にいかなかったんだけれども2度目後ろの方から全体を見てみると彼のすごさがよくわかった。こんなシリアスなお芝居の一種の清涼剤だったんだなぁ。しかも、この物語の中で、一瞬で空気を壊すことなく下手すれば重くなりすぎる空気を引き上げていたなと。桃を使った数々のノリツッコミが楽しかった。「家帰ろう、桃食べよう、目洗おう」


サルのチーモン菊池さん。前回は犬対桃、犬対李、そして維新隊の長田さんに目を奪われて如意棒を使った殺陣を見過ごしてしまったのでよく見ようと意識して。本当にすごい。そして、桃太郎が変わってしまったと、尊敬から悲しみと侮蔑の塊のような表情で桃太郎のもとを去っていく猿の顔がなんとも言えなかった。


キジのチーモン白井さんは今回一番のギャップ。一番心配だったのに、蓋を開けてみれば心奪われることに。特に千秋楽の「桃ちゃんは一人じゃないよ!」の一言が、見ているこっちが震えるほど、気持ちが前面に出ていてぼろぼろと泣いてしまった。心から絞り出しているような。そして「どうせ食べるんだろう」とか、じじいに入れ知恵してきゃっきゃしているキジから、桃太郎屋敷に乗り込んで戦っている時のキリっとした表情が心にぐさぐさときた。なんてすごい表情を見せるんだろう。


黒桃維新隊の皆さんも、最終日とあってやりたい放題で楽しかった。「ぺろぺろ」で撃沈する主役たち。的確な「ちょっと待てぇ」の突っ込み。「うるせぇ、うるせぇ」からの「病院行こう」。やっぱり頭数個飛び出てるチョコレートプラネット長田さん。次も彼の出ている芝居を見たいと思わせるほど。可愛い清美ちゃん。李太郎に初めて「お前のそのキャラ・・・、嫌いじゃない」と言われて本当に嬉しそうな隠しきれない表情。華麗なじじいの前転。「私に名前などない」という硬い意思を感じさせる、お美代の声。


本当に千秋楽見に行ってよかった・・・。先週の1回で終わっていたら、後悔で大変だったと思う。本当に脚本と、演出と何よりの役者が集まったっていう奇跡だったなぁ。本当10回じゃ足りない。もっともっと見たいなぁ。是非とも、同じメンバーで再演を期待しています。こんな素晴らしいお芝居がこれでおしまいなんて勿体なすぎる。
しかしまだ2演目目にしてこんな素晴らしいクオリティのものを見せて、これからの班への期待も高くなるな。楽しみでしかたない。
http://www.fandango.co.jp/jimbocho/performer/index-070718.html