神保町花月『犬G』

『犬Ｇ』
脚本：大谷ノブ彦（ダイノジ)
演出：大谷ノブ彦（ダイノジ)
出演：
ダイノジ/金成（ハローバイバイ）/あべこうじ/犬の心
ガリットチュウ/もう中学生　他
あらすじ（公式HP）
同窓会で出会った男性が企てた犯罪。
しかしその計画の行方は思わぬ方向へ…

ネタバレってほどしてませんが。
仕方がないことなのだろうが、テイストが近い話が続いた神保町花月。『犬G』は特に『頭蓋骨〜』を髣髴させ、そして『頭蓋骨〜』に及ばなかったと個人的には思ったのでもったいなかったな。しかし先に『犬G』を見たからといって手放しで「これすき」と言える芝居でもなかったかなとちょっと辛口な感想も。
話にがごちゃごちゃしているというか、時系列が私の理解力不足ではっきりしなかったために、伏線が最後まで放置されていたものがあったような。というか根本的にこれいるか？という伏線が多かったり。ただ大谷さんのブログを読むと、長編の「コント」として執筆したものを手直しして今回も芝居というよりも「コント」として上演したというので、そんな細かいことをつつくのも野暮なのかもしれません。
ただ個人的に「犬の心」、「あべこうじ」、「ガリットチュウ」と役者としてのスペックの高い芸人さんを起用したからにはもっとがっつりとしたものが見たかったという感想が出てしまったというのが正直な気持ちです。
特に前回が脚本に感服し、前々回は役者の力量に感服したので今回が物足りなく感じたのかも。

ま、そんなグチグチ書いたところで・・・なので。
役者：犬の心押見さんについて書きましょう。とにかく今回は押見さんの演技を堪能する芝居でした。中盤から登場して、ガラッと舞台上のコントの空気を芝居へとシフトする存在感がありました。登場してすぐの、未だにいじめられっことして無駄に低姿勢なところ。後半の本性をむき出しにして、これまでの恨みつらみを声を荒げているところ。そして何よりも「この表情を見るための２時間だったんだ」と思わせてくれる、刑事として登場してピンスポを浴びた独白のシーン。このときの表情で、これまでの鬱積した怒りや悲しみや恨みが静かながらも強く感じられ、改めて押見さんの役者としての才能っていうのかしら？に感嘆しました。
池谷さんとあべさんは、本当にもったいなかっかった。そろそろ池谷さんには桃太郎並みのがっつり芝居を見せていただきたい。ただ、池谷さんが本気出しちゃうと他の出演者は本当に、お飾りになっちゃうからまた犬の心班を心待ちにするしかないでしょうね。
そして実は心待ちにしていたガリットチュウの神保町参戦。個人的に熊谷さんの演技がとってもすきなんです。何だろう、不器用さと純粋さと真面目さの絶妙なバランスで成り立っている熊谷さんの演技は本当に見ている人の心にストレートに届く気がするんです。だから、今回の芝居も池谷さんと熊谷さんのシーンは凄く心に響いてきました。あ、このときの池谷さんの「俺、ひとりぼっちだったのか」のひと言も大好きだなぁ。ああいうひと言でがっと見ているこちらの気持ちを惹きつける池谷さんて、恐ろしい・・・。
あとは金成さんのがっつり芝居も見られたのは本当素直に嬉しかったです。つい最近の田村亮一座で、てっきり出演するものだと思って肩透かしにあったので。前半の「全てのボケを拾い捲る」ツッコミとしての役回りも、後半の「いじめはゲーム」だと言い切る残酷さを孕んだ重厚な芝居もどちらも満足でした。Wキャストだった芦澤さんの演技も、友達から聞くとまったく違った印象でそれもまた凄く良かったと聞いたのでそれを見られなかったのがちょっと後悔です。あの優しい風貌で「いじめはゲーム」と言い切るのも違った残酷性を秘めてて良かっただろうなぁ。

３本連続でダークなお話が続いた神保町花月。
次回はB面さん演出だから、絶対ポップであろうLLR班ですね。LLR班、福田花月inLLR単独ライブで見たときからこころ待ちにしてました*1今年最後の神保町、しかもクリスマス・飛び切りポップな気分になりにいこうと思います。

*1:８割嘘です。