神保町花月『何者でもない俺たち#1 』

『何者でもない俺たち#1  さりげなく出会って なにげなく見つめて』
脚本:丸山 智子
演出:湊 裕美子
出演:
ハリガネロック(ゲスト出演)/佐久間一行/出雲阿国
フルーツポンチ/はんにゃ/チョコレートプラネット
タカダ・コーポレーション 他
あらすじ(公式HP)
夢と現実のギャップに悩む若者たちと一人の中年男。
彼らを優しく見守る女。
ささやかだけれど、ちょっと変わってイイ感じの日常に生きる人々の群像劇。

すずらん大学3部作が個人的に凄く良かったのと、ハリガネロックの演技力に定評があるので楽しみだったこの公演。・・・ちょっと肩透かしだったかなぁ。ま、3部作の#1ってことで、登場人物の紹介が主になるのは仕方ないにしても物語が進まな過ぎでは?って思ってしまうほど。あと個人的な都合で、このあと予定が詰まっていたので千秋楽といってもやりすぎな感じがいらっときたかも。あとは個人的に「群像劇」っていうのが苦手なのかも。個々が主役であり脇役であり。自分がお芝居を見るに当たって、誰か一人というわけではなくても「誰かに」感情移入してみたいほうなので、今回の芝居は、「この人の立場になって、お芝居を体感したい」というキャラクターがいないのがちょっと辛いかな。回を増すごとに、各役柄のバックがもっと見えてこの人だと思えるときが来ると良いんだけれど。


ハリガネロックは本当久々に演じているところを見せてもらったけれど、やっぱり卒が無いというか巧い。大上さんが女性役で、みんなの集うバーのママなんだけどこれがとても良かった。みんなを見守ってみんなから慕われてという感じが凄く良く出ていて、本当にあんなバーがあるなら通いたいくらい。ユウキロックはダメな大人な感じが凄くリアルで。でもなんと言っても千秋楽の、ほぼ全員への無茶振り。「ああ、そうだ。この人しつこいんだった」って途中で思い出した。


はんにゃはすずらんで完全にマジックにかかった金田さんが、次はどんな表情を見せてくれるんだろうと思っていたら、今回は役者志望のヒーローショーのお兄さんで。カラ回る感じ、ヒーローに付いてテンション高く喋る感じ、そして幸子に一目ぼれする感じがすっごく良かった。やっぱり金田さんって巧いんだな。彼が今後どうなるかも気になる。川島さんは若干すずらんのときと雰囲気が似ている役かなと思ったので、ちょっともったいないなぁなんて思っていたけれども、今後変わるのかな。個人的に「凛」の時の暴力的な父親役がはまったのでね。ただ川島さんは、ガチガチに真面目な芝居も、凄くコント寄りな芝居もぶれることなく演じられているのが凄いなぁって。やっぱりはんにゃの二人の演技は好きだなぁ。


チョコレートプラネットはやっぱり松尾さんでしょう。巧いわ。本当に巧い。ただ若干残念なのは、今回も根幹はいい人な役なのがもったいない。奥底に、両親を早く亡くして妹と二人親戚中をたらい回しにされた過去を持っているって面もあるけれど、絶好調に悪い役とかも見たかったなぁ。長田さんは、折込ではいつもと違う感じの役とあってわくわくしていたら、調子のいいキャバレーのした働きの役で。いつも調子のいいことばっかり言っている感じが本当にすっからかんに軽くて、確かに新鮮かも。あと長田さんといえば、今回舞台美術も手がけたそうで。バーの背景は長田さん作とか。次回はちゃんとそういうところまで見て行きたいなぁ。


フルーツポンチですよ!今回私が神保町マジックだなぁと思ったのは。亘さんは前から上手だし、カワイコちゃんだし(笑)今回も私の中での亘さんのキャラクターど真ん中な感じで。ママに恋して、ママの周りのもの全てに可愛く嫉妬して、ママにいいところ見せようとして全部がカラ回っているところとか凄いいいなぁと。あんなボーイさんいたら、可愛がられるよね。ママに「お店つぶれちゃったら、オサミちゃんと一緒に旅に出る」(ニュアンスです)みたいなこと言われて照れちゃうところとか本当に可愛らしかった。でもなんと言っても村上さんでしょう。役柄がもう、インテリホームレスですよ。語弊を恐れずに言うのならば、ぴったりなんじゃないですか。演技は、フルーツポンチのコントで見られるようなキャラクターなんですけれども、それが役のインテリ+ホームレスで俄然輝いて見えてくるんですよね。たぶん今後、物語の中核になりそうなんで、彼の演技だけでも#2.#3に行く動機になるなぁって。


佐久間さんのダメなホストっていうのもなかなかで。一瞬「え?あれさっくん?」って思ってしまうビジュアル。ま、3秒でさっくんなんだけど。バーでキャバレーの踊り子を慰めているときは「うーん」って思っちゃうのに、公園で幸子に話しかけているときは「トキメク」感じが良くわかるのが、佐久間さんらしいのかも。


タカダコーポレーションは今回、ほぼ出番が無かったので残念。大貫さん大好きなんでもっとお芝居が見られるといいなぁ。次回に期待です。


あとすずらん大学が終わるに当たって、もしかしたら一番悲しかったかもしれない「ケンイチ&リュウイチ」のデュオ。「何者でもない俺達」でも健在でした。今回もまぁ、無駄に格好いい前奏*1、そして手羽先からいつの間にか千利休にシフトする歌詞*2最高でした。彼らの新曲を聴くためだけでも#2に行く価値があります(笑)今回はテーマ曲、転換中の曲と多数作曲したそうです。素敵音楽満載ですよ。ああ、本当にこの3部作が完結したら、すずらんと何俺で発表した曲を販売してくれないかなぁ。何度でも聞きたいっす。


と感想を書いている間に何度も「次回は」「#2は」とあるように行く気にはなってます。あとは時間をなんとか作らないと。年末から、神保町花月にはカメラが入っていないということなので見逃したからファンダンゴという選択肢が無くなってしまって。見たければ通うことしかないんですよね。

*1:褒めてます。

*2:絶賛!大絶賛