神保町花月「マイホーム」

脚本:タピオカ
演出:高梨 由(TRAPPER)
出演:
ミルククラウン/LLR/クレオパトラ/来八/惑星プラネット
工藤史子/玉城美奈子/小林千紗(TRAPPER)
あらすじ(公式HP)
「人は人生で何回もチャンスがある。そのチャンスを1回でもつかめた奴が成功者と呼ばれる。
俺は思った。絶対にチャンスをつかんで、絶対に売れてやる、と。そして時は来た!」
そのタレントは自らの手で自らの力でスターの座に上り詰めたと豪語する。
そんな彼を支えるもの。彼が支えて欲しかったもの。「は?支え?」それは一体なんなのだろうか。

楽しみだった同期公演。楽屋ブログでどうやら主演は来八のコバ君だなとわかってからますますの期待値で。本当に全員が楽しそうで、見てて自然と頬がゆるんじゃう感じが心地いい公演でした。


内容もベタではあるけれども、キャラクターが良いからのめり込めるし涙もこぼれます。脇のキャラクターもやりすぎだったりもあったけど(笑)自分が特に家族ものに弱いっていうのもあるんだけれども、それにしても泣いてしまった・・・。伊藤ちゃんがこんなにかわいらしく見えたのは初めてなんじゃないかってくらいかわいかったです。というか、お母さん役の工藤さんとのコンビはかわいくて仕方ない。


前回の「URAKEN」で結構がっつり芝居を見れて、これは主演的なものを見たいなと思ってた矢先の主演だった来八の小林さん。改めて男前だなーってまず思った(笑)ミュージシャンもこなすマルチタレントがはまり役だな。髪も久々に金髪で格好よさに磨きがかかってましたね。見た目の男前があるからこそ自然に見えるスター役。本当においしいし、はまり役だったな。家庭に恵まれず、自分だけの力でスターになるんだ成功するんだっていうギラギラとして我儘で高慢なところから、たった一つの暴力事件をきっかけに坂道を転がるように転落する人生。「なんでなんだよ」って叫びが悲痛でした。そばにあんなに親身になってくれるおじさんがいるのにと思うと、せつなくて。そんなカズヤが最初は「再度スターになるための手段」として、レンタルファミリーの仕事をこなしているんだけど、タダシや優子と触れ合ううちに「家族」というものの意味に気づいて本当の父親になろうとする姿がしっくりときて良かったです。途中までは期間が延長することも嫌がっていたのに、最後は「もうちょっと延長できないか」とカズヤから言わせてしまうこの心の変化がとても自然で涙が・・・。特に映像とリンクして、カズヤのこらえきれない涙が映し出された時は思った以上の感情の波がこみ上げてたまらなかったです。あー今回でもっともっと見たいって思っちゃいました。また主演とは言わないまでも、神保町花月に出てほしいなー。エンディングでの不意打ちの関西弁にときめいたのはヒミツです。あの顔の関西弁は私にとっては凶器です。


LLR伊藤ちゃんも今回ははまり役でしょう!!てっきり最初は小学生の役だと思ったんですが、劇中でまさかの中2ということが判明した時は正直声いださずも静かに衝撃を受けていたのですけど(笑)それなら役作り幼すぎるでしょう。「父ちゃん、父ちゃん!!」の言い方は10歳児でしたよ。それを「父がいなくなってしまったときから、タダシの中で時が止まった」と捉えることにしました(笑)伊藤ちゃん演じるタダシが無邪気で純粋だったからこそ、カズヤの心に入ることができ変えることができたのでしょう。その無邪気さが、タダシが本当は父親はもう出張から帰ってくることはないとわかっているってことでますます涙を誘います。カズヤがスターだったころ、ファンレターなんて読まない人間だったからこその人選だし、彼らもすべてを理解して受け入れた上でカズヤを家に招いたと思ったら胸がきゅーっとなります。伊藤ちゃんの「ごろにゃん」は最強にかわいらしかったなー。カップに名前を付けてきゃっきゃしてる感じとかも伊藤ちゃんなら違和感がないっていうこのすごさ。


一緒になってかわいいお母さんだった工藤さん。工藤さんは舞台に立つだけで纏う空気がほわほわしてて、見てて幸せです。一分のためらいもなくカズヤを夫として、父親として迎える大きさが、母親然としてて感動的でした。あんな母親かわいいな〜。ごろにゃんも可愛いし、夫がいなくてさみしいだろうし心細いだろうし苦労も多いはずなのに、子供と向き合うときは全力で。全力だからこそ、カズキの素行には胸を痛めるし。コップになみなみ飲み物を注いじゃうところとか全部がかわいい。お、かわいいしか言ってない!!


神保町では素敵フィルターが掛かるジェントルも今回もまた素敵フィルターでした。悔しい・・・(笑)父親がいなくなったせいでちょっと道を誤りかけている高校生。素直になれずにでも母親に当たることもできず、ただ腐っていたけれども、カズヤが正面からぶつかったことで家族に甘えることもできて和解できた高校生がぴったりだったな。個人的にカズヤに殴られた時の吹っ飛びっぷりが綺麗すぎて感動的。こういうのがうまい演者ってときめくんですよね。本当こういう役がジェントルはうまいなー。


クレオパトラ桑原さんと玉城さん演じるカズヤの両親も、スポット的出演だったけれども印象的で良かったです。特に暴力を振い、酒に溺れる父親を演じていた桑原さんが期待以上にはまり役で見てていいなーって。やさぐれた感じとかが無理がなく、ナチュラルで。エンディングトークでもみんなに言及されてましたが、最後「断酒=ビール缶を握りつぶす」がやりすぎ感が・・・。お母さんの玉城さんも、そんな風になった夫を見捨てず一緒にいる姿が健気で良かったです。


テレビ局、ADのクレオパトラ長谷川さんもかなり良かったですね。だめなADなところも本当にダメダメな感じがありありと見えてましたけれども、なによりもカズヤに「やめちまえよ」と罵倒され豹変した時が絶品でしたよね。特に、がっとカズヤの顔につかみかかるときなんか狂気と怒りが全身からあふれててぞくっとしました。


LLR福田さんは自由だったな。もう自由すぎて、ふわふわしすぎて躁なんじゃないかと思うくらいだ!だって壁にぶっかってんだもん。ぶつかってへらへらしてんだもん。そのままのテンションではけるから階段落ちんだ。その後出てくるときのテンションの低さったら(笑)しかし夙川アトム風の業界人がはまり役。健人さんとわちゃわちゃしているのが楽しそうで。なんだったら一番今回の班を楽しんでたんじゃないかしら。見ているこっちがわかるくらいはしゃいでましたね。


ミルクラ竹内さんは、地味ながらも重要ポジションでやっぱり安心感、安定感が半端じゃないですよね。心から「どうしたらカズヤは気づいてくれるのだろう」「こんなカズヤになってしまったのは自分のせいなんではないか」と悩む姿も、竹内さんのもとから持ち合わせている雰囲気と相まってリアルだったし。そうかと思ったらGREEへの紹介メールをもらえてうれしそうなところとか、見どころありすぎですよ。


惑星プラネットは初神保町ですよね。田島さんはオトメメンでの演出補でのイメージの方が強いので、この出演を機会に今度演出:田島さんのお芝居が見れたらいいなー。


脚本も好きだったんですけど、なによりこれまでも好みのものが多かった高梨さんの演出だったので期待ありありで。今回も使用している曲も、終わった後「これは誰のなんだ?」と気になる感じだし、スクリーンと舞台がリンクした感じとか良かったなと。
しかし同期公演は仲いい感じが前面に出て、楽しそうで見ているこっちも楽しいです。もっとチケットが売れたらトークライブもできたのになと残念に思うくらい。これまでに神保町では2・6・7・8期公演があったから次は9期あたりどうっすかね。