カリカ単独ライブ『しゃべるコント』

作・演出:カリカやしろ
出演:
カリカ


デッカチャン/コッセこういち/エレベーターマンション
遠藤逸人/リッキー

これまでにルミネで行われたカリカコントやモノクロアタックは見たけれども、「単独ライブ」と銘打っているものを見に行くのは初めてでワクワクとドキドキが最高潮で迎えた単独ライブ。見終えてみたら家城さんがことあるごとに「8年ぶりの単独ライブ」とこれまでのものとは一線を画していた意味が分かりました。そうか、単独ライブってこういうことなんだなと思い知らされた2時間20分。全力のカリカを一つ残さず受け止めようと、全身で集中して見た結果とても心地いい疲労感と想像以上の満足感に包まれて新橋の町を歩くこの幸福。これまで色々な芸人の単独ライブを見てきて、「これだ!!」と思ったときに感じる『この人たちと同じ時代に生きて、この人たちが面白いと思うものを面白いと感じられる感性を持って生きられて本当に良かった』という感情。久々に実感しました。カリカの凄いところは全力で出し惜しみしないところだと思うんです。どのコントも単独以外で見れる感じが全くしない、この嬉しい感じ。
家城さんがブログでおっしゃってました。

全国に散らばり
迫害をうけている
カリカフリークの皆様
皆様に優越感を

カリカフリークであることの優越感をプレゼントしたいです。

本当この言葉に全てが集約されてました。単独を見た今、カリカのファンじゃない人たちに対してこの上ない優越感を抱いてます。こんな素晴らしい作品を見ないなんてなんて可哀想なのって。終演直後にスクリーンに映し出された
『2010年6月  カリカ単独ライブ』
この文字がこんなに嬉しく感じることはないでしょう。


さて感想書いていきます。
コントタイトルは記憶と某掲示板の書き込みをすり合わせました。今後シングルカットされてどこかのライブで見るかも知れません。DVDにはならないと思われる内容でしたけど、一縷の望みをかけている人などいらっしゃったら以下は自己責任でご覧ください。

  • オープニングコント
  • 帝のおとぎ話
  • ピザばばあ
  • 男と男
  • ツチ(ハート)ドル
  • A CHI RA
  • ネクハゲ
  • ズボンワールド
  • No.1ボウヤ


開演前から怪しげな男が舞台上を行ったり来たりする雰囲気に、期待するなって方が無理がある始まりかた。この怪しげな場面から、ポップな格好の林さんに倒れたままの家城さん。家城「あーやっと終わった」という意味不明の台詞から始まり、ある男と女の輪廻転生の物語。物語という表現がしっくりくる。ただ人間が生まれ、死に、また生まれるだけでなく感情をも一緒に持ってめぐる運命の話。伏線という陳腐な言葉では言い表せない、複雑に絡まった糸のようなコントの構成に、見終えた後はため息しか出ない始末でした。コントとコントの間も、なんのブリッジもなく繋いだり、ラーメンズを彷彿させる舞台上での着替え。でもラーメンズみたいにスタイリッシュではなくポリバケツ傍らにおいて急に現実感漂う会話をはさんだりするのがカリカらしくて雑多で好きだったりします。これがまた伏線になっているんだから困っちゃいます。ブリッジで好きだったのが、最初カリカの二人が会話しているのに徐々にエレベーターマンションの二人とシンクロの後に入れ替わるもの。シンクロという演出が好きなので、これだけでも十分だったんだけど2度目の時はそのシンクロしてくる自分の分身を撃ち殺してしまうというところがにくい。ブリッジは本当伏線だらけで困ったー。林さんに「俺がいなくなったらどうする?」ってシリアスに聞かせたと思ったら、林「俺、竜なんだ」ってどういうことですが(笑)そんな会話を挟んだと思いきや、VTRのブリッジだったり。いろんなところが盛りだくさんすぎますよ。
あとぐにゃんとなるかと思ったのが、OPのVTR。映像を見ていると吸い込まれそうになって、そののちお師匠様とのコント。「二人が喋れなくなった時。その時はコントが勝手に喋りだす」この言葉が単独タイトルってだけでなく、ちゃんとした答えをもらえるとは・・・。


《帝のおとぎ話≫はコント内容としてはブラックで、スレスレなのに「指ぱっくん」と軽い響きがほおりこまれてわっと思ったり。卑屈な笑い方を見て笑ったり中にも、AIである奴隷が初めて「ゴロウ」と呼ばれた時の表情でぶわっと感情を揺さぶられたり忙しい。最後ゴロウが帝に話をするも、卑屈に笑ってしまい側近に射殺されるがAIであるために撃たれても撃たれても死なずに話を続ける姿になぜか涙が出そうになってしまって自分自身に不安になったりしましたけど。
≪ピザババア≫は今回一番好きだったコントでした。このコントだけて言うのではなく、全体を見終えた後に「さて今日の一番好きだったのはどれかしら」と考えたときに思う感じで好きでした。素敵すぎる台詞が多かったて言うのが最たる理由ですが。
『美しいことを心乱れることなくやるのが 上品』
『汚いことを心乱れてやるのが 下品』
『汚いことを心乱れることなくやるのが 猥褻』
最高に素敵な言葉。そしてピザばばあが美しく猥褻だった。そう見えた。そしてまじめなマナブがちゃんと子供に見えた。本当に驚くほどの表現力をおもちな二人ですよね。だからこそ設定がファンタジーなのにリアル感が出るというか。<<男と男>>関係性のわからないままの男と男の会話をいくら脳内で想像を膨らませたところで家城さんの発想に追いつくわけもなく。タイムスリップだ、人体実験だ、亡命だととんでもないのに、ピザババアのトラウマという発言ですべてがひっくり返るこの感じが気持ちいいんです。ババアとの思い出を、二人が入れ替わり立ち替わり演じる、ことがことだけにえぐいのだけれども面白みがあったり。分岐点を教えてほしいけれども、分岐点がわからないといった意味合いの台詞が好きでした。<<ツチドル>>ここは本当にかわいらしかった。このコントでもやっぱりテレビは無理ですかね・・・。ま「土を食う」「カルト的な?」ってアウトですわね。すごく出だしはポップなのに、後半のツチドルの色仕掛けがなまめかしすぎて困ります。久々にがっつりな家城さんの女性役を見たんですけれども、肉付きがちょっと良くなった分色っぽさや艶っぽさがプラスされてて大変なことになってませんか?(笑)<<A CHI RA>>遠藤カスタマイズは本当にカリカにはまったんだなー。そしてカスタマイズ自体もとても進化してましたね。このコントが一番最初のコントにつながった時に、この日の単独ライブへの観客としての心が決まったというか。ぼっとしてたら置いてかれるぞっていうか。<<ネクハゲ>>ネクタイをものすごい数巻いて「悪いサラリーマンはいねがー」と出てきた林さんを見て、懐かしい家城さんのトークを思い出しました。ブログに書いてるかと思って探したけど見当たらないので私の記憶違いかもしれないんですが、数年前に家城さんが「林にネクタイを100本つけさせてコントする」って話をしてた気がするんですよね。だからこのいでたちで登場したときに、わくわくが止まらなくなりまして。そしたら、ネクタイの戦い方はとてもバリエーションあるし、兄と妹の禁断的情愛もあったりと奥深すぎるコントでした。ときめくほど綺麗な星空を背に、兄の死を乗り越えて妹が決意するの「ピザババア」の原型というカオス。<<ズボンワールド>>これも好きだったです。本題に入る前に設定が普通に感じる前ふり。その後に見る、ズボンに飲み込まれる奇病が「ありうるかも」って思ってしまうこの洗脳具合(笑)ステテコが神経って表現がなんとも。ズボンに飲み込まれた先が、あの世界に通じるのかという思わず膝を打つ感じも気持ちがいいです。このコントの時、まるで太陽光のような照明の中セット後方にズボンを何枚もはためかせたセットがとても好きでした。あの数々つりさげられているズボンは、これまでに吸い込まれた患者自身なんだろうかなんて考えたり。<<No.1ボウヤ>>「男と男」で20年後の自分に教えてもらえなかった「その時」のこと。笑いだけでおしまいだった「ピザババア」のコントが今回の単独で一番になった理由がこのコントにあったように思います。あの日から1年も続いたマナブとババアとの関係が卑猥なのに切なく悲しくて。
『心を乱して上品なことをする 気高い』
この一言がなぜか心にぐっさりと刺さって仕方なかったです。この台詞、今回のなかで一番好きかも。兄に面影が似ているピザババアのNo.1だったマナブ。ババアに愛されたがためにトラウマになり、逃亡生活の末人体実験の実験台になったマナブ。マナブの「大嫌いだったけど、大好きだった」とババアに銃口を向けたマナブが最後に残した、「ね、僕って真面目でしょう」の言い方が鳥肌ものでした。これ林さんの冷酷というか冷徹というか魅力が溢れてていい台詞だったなー。<<天>>このコント前のブリッジで林さんの「竜なんだ」発言の後の声の出ない状況。声を一切と言っていいほど出してないのに、がつんがつん伝わって笑いの起きるこの感じ。「コントが勝手にしゃべりだす」意味がわかった時の衝撃ったらなかったです。これまでのブリッジが、形になる感動。おっぱいが大きい林さんを見て笑っちゃうこの感じ。いいなー、幸せだな。


本当、つらつら書いといてなんですけれどもとにかく凄かったんです。これまで見てきたコントってなんだ?って思っちゃうくらい、カリカの本気っていうのはすさまじいものでした。家城さんの頭の中で「これがしたい」って思って、アウトプットしたものを文字に書き起こして演じ、また相方の頭の中で構築されたものを完全に意識がシンクロした状態で演じる林さん。本当に、本当に恐ろしいコンビですよカリカって。


とりあえずカリカ単独は来年までのお楽しみ。私がカリカを見るようになってから約5年。5年待てたんです、1年くらい。そして次は豪華豪勢なゲスト陣を迎えてのMEETS。なんとしても来年6月までは生きる!!