神保町花月『月見草』

総合演出:白坂英晃(はらぺこペンギン)
脚本:冨田雄大/又吉直樹/神保町写楽
演出:冨田雄大/又吉直樹/神保町写楽
主演:ピクニック 
特別出演:
ピース/LLR/オコチャ
枝村明子/工藤史子/伊藤真奈美(THEフォービーズ
大山貴華/荻原由貴(ランニングホームラン)

ピクニックを主演に据えたオムニバス公演。実は前日の土曜日も見に行ってました。頑張ったんだね、ピク兄!!ってなぜか勝手に嬉しくなっちゃう公演でした。
作・演出のひとり「神保町写楽」が誰なのか明かされないまま幕を開けたピクニック班。蓋を開けてみたらまさかのLLR伊藤ちゃんというダークホースっぷりにびっくりしました。

  • VS冨田雄大「ハイパー大好きホワイトアタック」

出演:ピクニック/荻原由貴

出演:ピクニック/伊藤真奈美・伊藤智博

  • VS神保町写楽「はなび」

出演:ピクニック/工藤史子・又吉直樹

1本目は信頼のオコチャ先生の作品。楽屋ブログでオコチャ作品はピクニックの一人芝居と聞いていたので期待してました。あらすじとしては、初Hを前にした男の子の話のはずがラストでそれがストーカーの一方的な愛情と分かる作品。オコチャ先生がやらせたいこと全部入れた感じで盛りだくさんな内容でした。8分くらいかけて演じた台詞を2分で早口で言わせてみたり*1、タップダンスを躍らせてみたり*2。オコチャ先生の『ピクニックにアレもこれもやらせたい。ピクニックなら出来るでしょう』っていう期待感が見えてちょっと感動しました。芝居も前半はピクニックの普段のコントに近い感じなんだけれども、後半に進むにしたがってだんだん芝居にシフトして最後の最後の「これからでしょう」って台詞にぎゅっと集約されたなと。本当このせりふの為の数十分って感じで。個人的にこの時の危ない感じのキャラクターがピクニックっぽくなくて好きだったので、今度はこういう役も見たいなと思いました。台詞で凄い好きなニュアンスがあって(正確ではないですが)「学生時代は虐められてたけど、学校にはちゃんと毎日通ってました。て言っても褒めてほしいとか同情されたいって言うんじゃなくてただそうだったっていうこと」て台詞。凄く切なかったなー。自分の全てを知ってもらうことが「愛するってことの正解」と導き出した末の台詞だったんで。2回目見たときは前半の何気ない動作が、ストーカーなんだと分かった上で見ると怖かった。「こういう日に思い出は必要ない」とかコンドームのくだりとか。あ、もうひとつ好きなくだりがあった。「たとえとは生き別れました」は面白かったなー。


2本目は又吉作品。『凛』がすっごくすっごく好きだったので、今回もどんな素敵な台詞でこっちをメロメロにしてくれるか楽しみだったんですが、期待以上の切ない恋愛ストーリーでした。劇団を主宰しているがものにならない男と、その劇団で女優をしていたが今は夜の仕事で男を支える女の話。この芝居はピクニックも良かったんだけど何より伊藤さんですよ。私の中で神保町の2トップです(もちろんもう一人は3本目に出てますけど)怪物女優ですよ。今回も彼女の演技に泣きに泣かされました。土曜日はほろっと来るくらいだったんだけど、日曜日はしばらく涙が止まらなくてどうしようかと思った。感情移入しすぎたなー。「あなたはなにも悪くない。だって何も変わってないんやから。私が変わってしまったんやから」と別れるしか方法がなくなってしまった気持ちが切なくて痛いほど伝わってきて。「私の13年返してよ」って本心のすれすれのところの言葉と思うんですけど、言われた男も辛いよなと。最後のお願いと、二人で台本の読みあわせをするんだけれども台詞を離れてだんだんと自分の気持ちをぶつけるところが、ピクニック演じる男の不器用だけれどもちゃんと女のことを愛しているんだって純粋な気持ちがストレートに伝わってよかったです。最後だというのに変なお面を被ってギャグをするさまがこんなに悲しいとは。その姿に後ろ髪を引かれる思いで家を出る女も、涙ながらにギャグをする男の姿も切なかったです。本当この話、良かった。最後に伊藤ちゃん、パンチが本当に気持ち悪かった(笑)


3本目は神保町写楽作品。1本目の途中にOPをはさみ、そこで神保町写楽の正体が分かったのですが、正直びっくりしました。LLRトークで本を書くって話しがでたときも「俺が?」みたいなリアクションだったんで。なので作家のイメージが全くないまままっさらな気持ちで臨んだ3本目。見終えて思うのは伊藤ちゃんらしい、温かい家族愛でした。この芝居はオコチャの演技に尽きます。もちろんピクニックは良かったのはもちろんなんだけど。オコチャが演じたノスケのような旦那さんを持ったらどんだけ幸せだろうって。思い起こせばオコチャのストレートな芝居を見るのは初めてだったんですよ。(いつもおかしな役なんでね。)これがすっごい良いんだ。台詞回しとかぬるっとしているんだけど、そこが頑固な父親を持った優しい息子らしく見えて本当に素敵でした。オコチャの困った感じの笑顔はいいなー。個人的にピクニック&工藤さんの可愛い可愛いカップルが好きなんで*3、今回も手をつないでぐるんぐるん回っているのとか見てるだけでニコニコしちゃう。頑固で女にだらしない父親なんだけど亡くなった奥さんとの秘密の約束はちゃんと守るし、きっとお父さんにとって世界で一番愛している女性は亡くなった奥さんなんだろうなって。工藤さん演じる死神の名前が「レナ」だったのはアレですよね、れなぽんずですよね。あー本当に可愛かったな、工藤さん。ギャルな工藤さん、新鮮。「レナでぇぇす」*4のピースの感じとか「こんちわっ!」の言い方とか全てがツボ。途中で一瞬キングの今野さんになりましたよね(笑)そう思いきや二人になって、そろそろ死神の本来の目的を遂行しようかとなったときの淡々とした喋り口も良いバランスだなと。最後ピクニックが花火を見ながら奥さんを思い、死んでいく表情が最高に良かったです。


さて、このお芝居舞台の転換中にもうひとストーリーが展開されてました。ヒラちゃん(綾部)とヒカル(福田)の恋のお話。てっきり幕間は白坂さんががっつり演出つけたのかと思ってたんですが、トークライブで話してたことによると綾部さんと福田さんはゲネからしか参加してないということで(!!)とにかくバカップルでしたね。ヒカルのブリッコっぷりが半端ない。可愛くはないんでしょうが、可愛く見えたので眼科に行きます。しつこいしつこいコント。土曜よりも日曜とどんどん長くなってます。自由!ベタ中のベタな展開なんですが、ヒラちゃんに「結婚しよう」とプロポーズされたヒカル。ヒカル「別れよう。ホモってやっぱりいろいろ大変だし。」と別れを切り出し、ヒラちゃんもそれを受け入れる。ヒラちゃん「次にまた会うことが出来たら、それは運命だ」と言って。二人背を向け合って歩き出すも、トラブルで進めないヒラちゃん。ヒカル「別れくらいちゃんとしようよ!」ヒラちゃん「また、出会ったね。運命だ」!!脳内で90年代のトレンディドラマの曲が流れましたよ(笑)ベタ!ホモ!と笑いながらも、綾部さんがちゃんと男前だから成立。3本目の後日談で、亡くなった父親のマンションの引越しに来たヒラちゃんの元に来たヒカル。ヒカルの「来ちゃった」の言い方に、きーっとなったのは内緒。日曜日にはヒラちゃんを写メで連写に爆笑。自由過ぎる!!



この後のトークライブにも行ったのですが、メモとか取ってないので軽く。
・ピクニック主演でというお話は、今年の2月ごろ。R-1のあれこれで*5落ち込んでたピクニックさんを救済する為に「なんかやろうか」とオコチャ先生が企画立案したもの。たまたま一緒にいた又吉さんにも「なんか書いてくださいよ」という発注に軽い気持ちで承諾したら、あっという間にオコチャ先生が上に話を通して実現したとか。
・当初神保町写楽は田所先生だったがいつの間にか伊藤ちゃんに。又吉さんはそれを知らずに伊藤ちゃんが書いたとしってたいそうびっくりしたそう。
・神保町写楽という名前は又吉さん発信。伊藤「自分で言ってたら相当いたいでしょう」伊藤ちゃん曰く今回の作家仕事は「気がついたら巻き込まれてた気分」だそう。
・ギリギリまで写楽の正体を公表するか考えてたという。もうひとつの案としては、公表しないまま5・6本かもなく不可もない作品を発表するというもの。
・今後も神保町名義で誰か書いたら良いのに。
・ぬるっとした空気になったタップダンスのシーン。タップ経験者の伊藤さんに教えてもらっていたそうだったんですが、伊藤さん曰く「音を鳴らすのがまず難しい。ピクニックさんはその点に関しては天才ちゃうかと思うほど」だったとか。そこで満足してしまった結果。せっかくなのでタップ夫婦(ピク&伊藤)で披露。やっぱりぬるっとする(笑)
・5分に1回くらい、誰かが「ピクニック凄いよ。頑張ったよ」と発せられるこのピクニックの凄さ。
・ぴりぴりしていた初日。まさかの先輩・綾部さんに「ちょっと静かにしてください」と暴言を吐いてしまうほどの緊張感。そんなピクニックの前を、「やることもないし、着替えようかなー」と通り過ぎる工藤史子。
・伊藤さんの残念な私服。アムロナミエな帽子等々。
・伊藤さん蛇女説。演出家である又吉さんから、100点を貰うほどの女優・伊藤真奈美。芝居中も泣きの芝居で役に入り込み、泣きすぎて化粧が溶け黒い涙を流すほど。この良い話を「蛇女」と一蹴する芸人達。伊藤さん曰く「それまであほなことばっかりやったピクニックさんが、台詞の読み合わせのシーンで向かい合ったときの目が本当に良くて気持ちが乗って涙が出てしまう」だとか。千秋楽はピクニックもさすがにあのお面の中で涙を流していたそう。
・そんな役に入りきり、袖でも気持ちを作っている伊藤さんの数十センチ前で体育座りをして舞台を見る福田さん。この芝居は何回見ても良いと思えるので全部見ていたとか。
・ヒラちゃんとヒカル。ゲネではじめて稽古に参加した二人。綾部さんはいまだに全ての物語が分かってないとか。回を増すごとに増えるアドリブ。土曜は直前まで福田さんが平和島の営業で、開演後の飛び込みで舞台袖で着替えるほどのあわてようにも関わらず新しいくだりを足そうとする綾部さん。さすがに「もう無理です」と福田さん。綾部「福田に怒られちゃったよ」って。
・思い出したかのように何度も「本当ピクニックは頑張ったよな。大変だったよな。」とダメ押す綾部さん。ピク「そんなの言っても泣かないっすよ」(笑)綾部「もういいから、お前泣けよ」
・ピクニックの感想としては「大変だったけど、楽しかった。またやりたい」って言っているのを見て格好良いな。是非ともまた主演はって欲しいなって思いました。

*1:土曜日は変な間が多かったけれど、日曜は一瞬台詞が飛んで焦りはしたもののこっちのほうがスムーズな台詞回しだったなー

*2:タップは自分が見ているのが森山さんちの未来くんだったり川平さんちのジエイだったりするんで、ピクニックのたどたどしい感じはニタニタ見てしまったけど音がならせるだけでも凄いよ。

*3:『あいLOVEゆう』

*4:これは後の「サキでぇぇす」も良かったなー。

*5:エハラさんに対するあれやこれや(笑)