神保町花月『誰なんだ』

脚本:谷口聡
演出:山下哲也
出演:
2丁拳銃/ブロードキャスト/LLR/シューレスジョー
国崎恵美/長谷川葉生
あらすじ:
年齢も性格もバラバラな5人のギャング。
ある時舞い込んだでかい仕事が失敗に終わり全てを奪われる。
裏切り者はいったい?

これはブロードキャストファン、LLR福田ファンは必見なお芝居でしたね。もちろん私も必見の部類。序盤はちょっとばかりもっさりした展開だなと思ったんですが、裏切り者がいるとはっきりしたあたりからぐんと芝居が詰まって、緊張感もあってよかったです。また脚本書いているのが、谷口さんだからか2丁拳銃の二人の役があて書きな感じ、且つ格好いいしで堪らなかったです。良いもの見ました。
あらすじは楽屋ブログに掲載されてるはずなんで、割愛。


エース(修士):もうむっちゃ格好いい役。ずるいよね、修ちゃん。最後まで仲間に裏切り者なんていないって信じて、みんなで新しい組織を立ち上げようって心意気が男前じゃないですか。その性格を逆手に取られてしまうのが切ない。ラスト、エース一人になってしまってから「考えろ、考えるんだ」とぐるぐる頭をめぐらせているのが素敵でした。途中の小ボケ混みで。しかしエンディングで仰ってたけど、最初はこのシーンの台詞はナレーションで流す予定だったらしいんですが、喋るバージョンで正解ですよね。緊張感が増しましたもの。ただ何も標準語じゃなくてよくないかとは思いましたけど。たまに見え隠れするイントネーションの違いが気になるので。関西弁のリーダーはダメですかね(笑)


ジャック(吉村);本当吉村さんは見る度に「役者さんですか?」って言いたくなるくらいお上手ですよね。毎回ファンになってしまいます。今回もこれまで神保町で見たことない感じの役柄で、新鮮でした。年下で末っ子っぽい感じがとても新鮮。周りに比べて自分に自信がなくて、ちょっとおどおどしててって言うのが自然に出来てる!上手い!って。また衣装が一人ノージャケットで、サスペンダーなのも可愛らしさを上手く表現してて良かったなと。そんな可愛らしさから一転、彼女が来たら振り切れたツンデレって(笑)言葉は乱暴なのに、語尾が全部優しさで出来てるし。それがまたわざとらしくないっていう、もう役者ですかと。あー国崎ハニーの暴露は「ラメ」国崎さんの「誰に聞いてもラメのことしか言わへんわ!」って(笑)もうラメ=吉村さんが笑いにしかなってません。


ジョーカー(房野):あー本当良い。最高でした。スーツ+めがねのビジュアルもよし、寡黙で冷静で冷酷で社会を裏切ってるってキャラクターもよし。言うことないです!この房野さんが見れただけでも行ってよかったです(笑)これまでの房野さんの神保町の役にもなかった感じだし、普段の舞台で見る房野さんともかけ離れた印象の役柄だからこれこそ新たな一面って感じで。そんな寡黙な感じなのに、ラスト近くで見せた怒号。普段の房野さんからは想像できない感じで、でもちゃんと迫力があって。ベタですが銃撃戦でのハットを投げ捨ててからの「銃はこうやって撃つんだ」は格好良かったです。その前の全員での決めポーズの時の「俺の銃を使え」とピストルを連絡係に渡し、自分はハットでポーズを決めるところも好きでしたね。そんな格好いい感じもあれば、警察からの宝石奪還の際の「俺、警察官だ」のノリツッコミもあったりで大満足でした。


クイーン(福田):2人目の大満足キャラですよ。2度目となる国崎さんとのカップリングが愛らしくていいですねー。いちゃいちゃが可愛いってそうないです。スカートにストローさしてトリップするとか、ちょいちょいやりすぎでしたけど(笑)終始キングと小競り合いを繰りかえしながらも、キングがロシアンルーレットで最初に死んでからの動揺と気の触れる感じがぐっときました。言葉では表せない、ビジネスパートナーだけに留まらない大人の男の友情って感じがして。演技としても仲間を誰も信じられなくなって、気が触れて仲間をバンバン撃ちだしてからがとても良かったです。1本ネジが外れた感じがリアルで。特に最後エースと銃を構えて対峙するシーンは、ものすごい緊張感でこのシーンのためだけにもう一度見たい!!って思うくらい好きでした。


キング(シューレスジョー):なぜ彼はあんなにも白髪交じりの髪型がしっくり着てしまうんですか。あの落ち着き、貫禄。なのにキャラクターとしてはお尻に難有りのコミカルさ。ずるい!!細やかな芝居が隙がなかったですもの。クイーンとのやり取りはどれも好きでしたね。そしてまた死に際が綺麗なんですよ。上手いんすよ。いーなー、シューレス主演でオコチャ先生あたり書いてくれないですかね。がっつりみたい。


連絡係(小堀):一番格好良くてずるい役だよなー。ヘタレで、小物で、おどおどしててただの連絡係と思いきや、チームのボスなんて格好良すぎるでしょう。こういう含みある役柄に小堀さんってぴったりはまりますよね。ジャックやクイーンが彼女と会話しているのを聞いてるときのツッコミも完璧。ラスト、暗転の中携帯電話のバックライトだけが光る中での「了解です」、携帯閉じて完全暗転の流れは鳥肌立つほどぞくっとしました。最後の最後にぎゅって締まる芝居、大好きです。ハニー暴露の「そろそろ開放したれや」は納得です(笑)


ハニー(国崎恵美):ずるい!可愛い!今回も中盤でだれそうなところをごっそり笑いとっていきますね。もはや貫禄。登場からして、チャイナドレス+照明+スモークなんてパーフェクトでしょう。国崎さんといえば(?)な恒例の逆セクハラ。今回も暴露はするわ、嫁しか抱かん!とご立腹→「たまには嫁以外の胸も揉め!」(笑)エンディングでシューレスさんに「やっすい風俗にいった気分」と称され、房野さん以外に「パンツ見せー」と強要。か、格好いい(笑)と思いきや、千秋楽での修士さんの反撃暴露に「あの、ハニーが少女みたいに僕の背中をぎゅっとするんですけど」と福田さんに言われてしまう可愛らしさ。また出て欲しいなー。


彼女(長谷川葉生):アイドルさんなのに、吉村さんにはツンツンされてもくっついて芝居してるだけで超好感度!千秋楽ではハニーの「お前もパンツ見せぇ」に立ち向かうし。良いです。


謎の男(伊藤):何かあるんじゃないの?と思わせておきながら、本当に謎なだけだった男。劇中に「後から付け足されたような役」と揶揄されるのも、伊藤ちゃんだと笑っちゃいます。本当に神出鬼没、謎。でもあまりの含み笑い顔に「こりゃ完全なミスリード」決定!でも楽しい役柄。演じてて(?)楽しいだろうな。「水道トラブル5000円。女性のトラブル5000円、ノートラブル0円」ってブロードとのやり取りがしつこくて好きでした。


かなり間が空いて思い起こすと、実は脚本云々というよりは役者の力量で魅せられた芝居だったなと。彼女がらみだったり、海外バカンスの伏線(実は痔の手術)だったり、謎しかない男の登場だったりと色々有れど、なんだかんだと怪しいのは連絡係でしょうと。だけど、演じ手が魅力溢れるメンバーだから引き込まれるし楽しめるし。特にブロードの二人は、脇でもきらりと光る演技をコンスタントに見せ続けてくれているのが本当に素晴らしいなと。でもやっぱり脳裏に鮮明に焼きついているのは、エースとクイーンの緊張感溢れる対峙のシーンだったりするのです。改めて、あのシーンは完璧だった。