神保町花月『いつしよ』

作:神保町写楽LLR伊藤)
演出:白坂英晃(はらぺこペンギン!)
出演:
もう中学生・グランジミルククラウン
クレオパトラ・オコチャ他

写楽先生の2作目。
グランジが神保町に出演した際の感想として、自分の中でのあるあるなんですが今回も性懲りもなくラブレターみたいな感想となってます。そんなんでもいいから読んでやるよって方だけどうぞ。身はないです。愛情だけしかないです。


まずは伊藤ちゃん、素敵な作品ありがとう!って気持ちで一杯。『月見草』で初めて短編を見たときに、伊藤ちゃんらしい家族愛が一杯の心がほんわかする話で好きだなと思ってました。でも伊藤ちゃんだし(失礼)長編はどうなのかしら?なんて思っててすみません!!とっても素敵なお話でした。実際自分は一人っ子なんで兄弟の絆とか分からないけど、でも私にも家族はいて一人っ子だからこそ家族が好き過ぎて。そんな家族愛の部分はとても心に響きました。兄弟がいないから兄弟へのコンプレックスとか分からないけど、居る人は自分が感じた以上の何かを感じられたんだろうと思うと羨ましいです。また兄弟が一杯いる伊藤ちゃんだからこそかけたお話なのかな。
演出は大好きな白坂さんなんで、安心しかなかったのですが今回もやられましたね。最初の暗転の中での兄弟の会話。オープニングの演者の名前とスポットでの演技。これだけで感情がものすごく揺さぶられて、長谷川さんと石井さんがいい感じなのを切ない表情で見てる遠山さんのところで恥ずかしながら泣けてきて困りました。


ジョニー(シロ)とクロの組み合わせはずるいのひと言でしょう。芸人さん脚本ってことで、完全にぴったりなあて書きって言うのもあるけれども、それをも凌駕するもう中学生のキャラクター。ジョニー役は本当、もう中学生しか出来ないなと。現実にいそうでいなそうで、でも今この瞬間には確実に存在しているっていうふわっとした存在がぴったりで。ジョニーがいるとなぜかその場が楽しくなって、明るくなって、幸せになるって言うみんなの台詞が本当にそうだなと感じさせる。ジョニーの「あざーっす」の言い方が可愛らしすぎてどうしようかと思うくらい。ああ、もう中可愛い。寂しいからいつしよに居たいですって言う姿もまた可愛い。もう中むっちゃでっかいのに、可愛い。人柄が良く出てたなー。可愛らしいだけじゃなく、みんなばらばらなんて寂しいから、みんないつしよがいいから絶対ばらばらになんかさせない!って強いところも見せたりと本当素敵な役立ったなと。
またその対比で五明さんの存在がくっきり際立つ感じがなんとも。雷ごろごろ、ピカピカの中で五明さんが一人ってシーンがめちゃくちゃ印象的で。五明さんは体格の大きさ以上の存在感が凄すぎますって。怖かったりでも本当は弟思いな優しさを感じられたりと本当上手いな。最初図書館にシロを探しに来たときに、大さんを脅すんだけどそれが本気で首をしめにかかるっていうリアルな迫力が溜まりません。相方を舞台で本気で殺そうとするのは止めてください。また首絞めながら笑ってるんですもの(笑)グランジはどこに向かっているのですか?(笑)


主演はもう中学生だけど、私の中では遠山さんが主役なんじゃんって思った今作。普通の男の人を演じさせたら彼の右に出る芸人はいませんよ、もちろんいい意味で。またセットしていない今の髪型が、いい感じで普通なんで。遠山さんが普通に存在すればするほど、ジョニーの存在が浮つきそうなのにそうならない接し方が絶妙で。告白しようと思った寸前、逆に弟に思いを寄せていると分かってしまった表情。自分の気持ちを殺して、片想いの相手に接する表情。悲しみと悔しさと怒りを抱えたままの姿。その思いを包み隠さず弟にぶつける姿。どれもこれも心の琴線に触れまくって困ります。毎回グランジ出演のお芝居を見ては同じことを書いているので、もう正直恥ずかしさしかないのですが書きますよ。遠山さんの演技が好きなんです。今回も本当小さな心の変化を丁寧演じやがって!って気分で一杯です。それかと思えば、弟に初めて自分の本当の気持ちを吐露するときの仕上がりすぎたやりすぎ演技も含めて大好きでした。弟のせいにして自分から逃げてたことに決別して、また野球始める。その時は最初にお前の球を受けたかったと、弟とキャッチボールするシーンは本当に涙がつつーと。あとおまけのように、ギター弾くシーンがあってラッキーでした。今までアコギを弾いてるのは見た事あったけど、エレキは初めてだったのでちょっとワクワクしてしまいました。
長谷川さんも良かったなー。遠山さん演じる兄の心の中をわずかでも感じてしまった状態で、長谷川さん演じる弟の飄々としている姿を見せられると、ぐっぐと兄に感情移入させられて困ります。またこの飄々と加減が、兄がコンプレックスを感じる絶妙な加減だなと。兄に本心をぶつけられて、弟も受けるように本心をぶつけるんだけどこの口調が(笑)遠山さんもやりすぎではあったけど、オイラにやんす口調はダメですって。めっちゃええシーンなのに!ま、このシーンがシリアスなのにやんす口調だけどぶち壊しにならなかったのは本当に演者の力量と、演出の妙と、何より先生の台詞のよさかなと。最初はジョニーに対して否定的なのに、兄とのあれこれを通して最終的に受け入れているのも良かったなー。2人とも上手だから、最初のお誕生会のシーンから二人の間に流れる不思議な間というか関係性というか、ちょっとギクシャクした感じが良く表現されてて凄かったなー。


図書館の二人はずるい!遊んでる!(笑)大さんの芝居における遊びには慣れたと思ったけど、ラスト「バンドやろうぜ!!」からの『キクラゲ』キャラってなんすか。でもそれまでが今回は真っ当な人間でよかったです。大さんはとっぴなキャラクターは崩壊するからアレだけど、ごく普通の役もちゃんとこなすからずるい。暴力でしか他人と関われなかった男が、痛みを知って改めて人と友達になってくれというところは本当に微笑ましくて泣けてきました。桑原さんもいい味のキャラクターだったな。大げさにキザな感じがいい。桑原さんの胡散臭い役どころははずれなしですね。周りの人間がお金しか目当てじゃなかったと知ってしまった悲しみとか辛さが伝わったのも、その前の胡散臭さや軽さがそう見せるのかなと。2人とも最後結衣ちゃんから、「もうお友達だと思ってましたよ」って言われて、なんでかそこからバンド組むことになってよかったねーって。
結衣ちゃんというみんなの憧れの女の子を演じた石井さん。前回パンサー班で、なんて透明感のある演技をする女優さんなんだろうって思って、また見たいなと思ってたので嬉しかったです。今回は透明感にさらに磨きがかかったような。ほわんとした雰囲気が本当図書館司書って役にぴったりでしたね。幼いようで、温かく包み込む感じの雰囲気と喋り方がとっても好きです。こりゃもてるわって。また可愛らしい顔して芸人相手にぶっこむんですもの。
最後に拓也と信也の両親役の二人。「月見草」での写楽作品でも夫を演じたオコチャさん。その時もむちゃくちゃいい旦那様で、こんな旦那さんがいいなって思ってたんですが今回はそれに輪をかけましたね。こんなラブラブな両親、自分の両親だったらちょっと照れるけどあこがれる!また愛情が旦那さん>奥さんかと思いきや、同じくらい奥さんも旦那さんのことが好きなのがいいですね。奥さんが大事!なのかと思いきや、ちょっとしたことで歯車が狂い、お互いに悩んでいる兄弟をさりげなく後押しする良きパパでもあるし。本当素敵でした。オコチャ先生としての作品も好きだけど、オコチャさんにはもっと演者としても神保町に出てほしいなー。お母さんの加藤さんも素敵な奥様で。直ぐ歌っちゃうママが可愛らしすぎます。高嶺の花だったのにパパを選んだというママの人柄が良く現れてたなって。


見終えてぽかぽかと暖かくなるお話でした。写楽先生の作品、また見れたらいいなー。