劇団乙女少年団第11回公演『ピンクの指輪ちゃん』

作・演出:カリカやしろ
出演:
ライス関町
ジャングルポケット斉藤/かたつむり林/ピクニック/パンサー向井/畑中しんじろう
グランジ五明/パンサー菅/オコチャ/デッカチャン
ゲスト:平成ノブシコブシ吉村
エキストラ:グランジ遠山/グランジ佐藤/パンサー尾形/ライス田所
      ジャングルポケット太田/ジャングルポケット武山

2006年4月で一旦休止していた劇団乙女少年団が復活です。


幸せな2時間半でした。またこの世界に帰ってこられたんだって思ったら幸せで幸せで。

主演の関町さんのピンクちゃんが魅力的な女の子で、大好きでした。死んじゃったママが大好きで、ママに会いたくて会いたくて、会いたすぎてママになりたかったマコト。二十歳の誕生日、ホワイローズに出会ってその夢が叶った。そして同時に愛を知った。素直に「愛されたーい」「愛、育てちゃいます!」と声に出し、どうすれば愛してもらえるのか苦しくなるほど考えるピンクちゃんが本当に可愛らしくてたまらなかったです。だってちゃんと女の子なんだもん。一瞬誰かわかんなかったです。たまにちらりと見えるお腹は愛嬌ですよね。ママとパパのことを知っているというレッドローズに出会い、「愛される前に、愛することを知りなさい」と諭され自分のアイデンティティのあり方も含め悩むピンクちゃん。そして姉と慕うスミレちゃんの死、それと同時に知った愛し愛されるということを胸に、ホワイトローズに飛び込む姿は切なくそしてキラキラしてました。ホワイトさんの愛という光を浴びてキラキラしたいという願いが叶ったなーって。ピンクちゃんの全てがまっすぐで可愛らしくて素直だからこそ、みんなに愛されるピンクちゃんて言うのがぴったりでした。

もう1人のピンクちゃんであるマコトを演じた菅さんも凄い良かったです。ド頭に女言葉になったときは度肝抜かれましたけど、回想シーンを積み重ねれば重ねるほど自然に。ピンクちゃんとマコトがホワイトローズと対峙して交互に喋るシーンからのユニゾンは本当鳥肌が立つほどでした。マコトはやっぱりラストの空港のシーンが抜群に格好良かったですね。ホワイトローズの腕をぐっと引きよせてのキス、そして去り際のサングラスを外してのあのにやりとした表情。さっきまでピンクちゃんで可愛かったマコトなのに、めちゃくちゃ男らしくて色っぽくてぞくっとしました。これこそが自分のアイデンティティだと女になったマコトが、ホワイトローズという愛すべき存在に出会い、レッドローズからパパであるブルーローズの本当の想いに気がつくことができ、結果ホワイトに「私のアイデンティティ上げる」と手を取り合って逃げようと決めたこの心の葛藤、心境へ至った過程が丁寧に描かれていたからこそのあの表情の色っぽさかなと。

ブルーローズを愛していたホワイトローズ。バイセクシャルだったために、ピンクローズと結婚してしまった後も関係を続けていたホワイト。そんな彼が愛するブルーローズの息子であるピンクちゃんを「愛してる」と自覚した時の心境は相当複雑で切なかっただろうな。ピンクちゃんのまっすぐな「愛されたい」、そして「愛したい」って気持ちが届いたんだなって、最後マコトと手を取り逃げたのを見届けられて良かったです。幸せになれーって思ったし(笑)

今回のお話で一番好きだったスミレさん。もう最初の「お姉ちゃんに敬語なんて使ったらおかしいでしょ」って台詞でぎゅっとつかまれましたね。自分を「私はババアだから」なんて言ったりしながらも、強くて、みんなの精神的な支えで、優しくてっていうスミレ像がぴったりなんですよね。そんな強さの半面、年下のキクのことを心から愛してるのがピュアで切なくて。笑い方とかやり過ぎなところもあるのに、ここぞって時はすっとスミレちゃんに戻れる林さんの演技のポテンシャルには毎回驚かされます。初めてキクと踊るシーン。「舞台は地球、月明かりが照明、音楽は鼓動。」って素敵すぎます。そのあとどんだけキクの体をまさぐったとしても(笑)その初々しいダンスシーンがあっての、MJダンス。二人の距離が縮まった感じがぐっと出てて。それを経て、あのシーン。今思い出しても涙がじんわり滲んできます。ピンクちゃんに言った台詞「これからもずっと一緒よ」があっての、タンポポちゃんに刺されるこの場面。刺されてもなお、タンポポちゃんを心配して、みんなを気にかけて。そんなスミレちゃんだからこそキクに対する、スミレ「最後のババアのお願い。・・・キスして。・・・・・・恥ずかしい。」「死ぬ前に振られちゃったわー。でも大切なのは気持ち。私の気持ち。キク、私はあなたが大好きだったわー。」そしてキクにキスをしてもらっての、「ラッキー・・・。」もうこの辺りの台詞全部が胸が詰まるほど切なくて、悲しくて、辛かった。家城さんのこの辺の書き方、絶妙です。スミレちゃんは死ぬ間際、幸せだったらいいなー。
ここはキクも本当に良かった。畑中さんは本当に共演する人に引っ張られて演技がすごく良くなりますよね。今回も林さんとの相乗効果ですごい良かったです。本当にスミレちゃんを心から人として尊敬し、心を通わせていたキク。初めてスミレちゃんと踊った時の照れたような表情も良かったけど、MJを踊った後のスミレちゃんに少しは追いついたと言わんばかりの満足げな表情も好きでした。

ピク兄のランちゃんは一番女の子だったな。普通にピク兄は可愛らしいから*1メイドの格好はただの女の子だったし、なにより好きな男のために生きてる!って感じが健気で大好きでした。また付き合ってる男が売れない芸人っていうのも、なんか変なリアリティがあった(笑)だからこそ、ボスがお金をゆすった相手を殺しに行ったと聞いて、「やばいわよー!!」って焦るところも、彼氏のもとに駆け付けたら別人が殺されたことに本気で安心して「よかったー」って口に出しちゃうのも納得できる。ランちゃんはただ一途で、彼と一緒にいたいだけなんだよね。彼氏である尾形さんと逃げるとき、ひょいっとお姫様抱っこされてる様が可愛らしすぎました。

向井さんは本当あたり役だなー。ガーベラという名前が、個人的に思い入れが強すぎて一瞬びっくりしましたけど。*2前半は小悪魔的女の子って感じで、ぴったりな役だなって思ってたら後半の頭でもう一個ぴったりな「実はボス」って!しかも「偉くなりたいだけの何が悪い?」って言っちゃうような、出世欲の強い男らしい男なのが良かったです。またこのボスってわかる直前がAKBだから、ますますのギャップが。

乙女と言えばのオコチャ&デッカチャン。家城作品で演じるオコチャの役柄が毎回好きなんですが今回のタンポポちゃんももちろんでした。スミレちゃんを刺してしまうシーンでのこの2人が特に。タンポポちゃんはスミレちゃんを刺しちゃったけど、本当の意味での悪気はないんですよね。ただただみんなと一緒に居たいって一心だったんだよね。不器用なんだろうな、タンポポちゃんは。ここにいたい→ピンクがいるから居られない→いなくなれば良いんだって思っただけ。そのある意味無邪気なピュアな思いが伝わるから、嫌いになれない。家城さんの作る芝居は、嫌いになるキャラクターがいないんだよな。デッカチャンの「スミレちゃんの気持ちがもったいないよ」って台詞で、スミレちゃんの心意気も性格も全部伝わって素敵でした。

先にエキストラ部門を。ダンサー(田所さん、太田さん、武山さん)から。なんすかあのボディは!田所さん!キレは太田さん、武山さんは普通(笑)なのに目が追ってしまうだらしなボディな田所さん。ダンスもなんか変(笑)でもこの急にカットインするダンスシーンで、「あーオトメメン!!」って気持ちがぶわっとあがりました。もうひとつのエキストラな漫才組(遠山さん、大さん、尾形さん)。漫才もさることながら、ランちゃんが関わってくるシーンで大さんが死ぬ間際以降の遠山さんの演技が、エキストラなのに無駄にウマで(あー乙女、遠山大輔&吉村崇のW主演で見たい!!)ってもだえそうでした。こんなちょっとなのにウマって(笑)

最後は乙女少年団の申し子、ゲストの吉村さんについて。私は本当に乙女少年団での吉村さんに思い入れが強すぎるのです。乙女少年団第1回公演「桃を抱く」の桃太郎を演じてて、なんてキラキラした人なんだ!ってまだ全然無銘だったのになんて華があるんだろうって度肝を抜かれたのを思い出します。*3久々の乙女少年団の公演にゲストで吉村さんが出ると知ったときは本当に嬉しかった。そない盛り上がらなかった登場でしたが(笑)吉村さんの「乙女少年団に帰ってまいりました!」は本当心に来るものがありましたよ。乙女では初のオカマ役なのも新鮮だったなー。乙女の吉村=ヒーローだったから。『鉄の女』という渾名がしっくり来る、百戦錬磨のオカマってキャラクターがぴったりでした。ピンクローズに「愛されるよりも愛することを覚えなさいと」厳しく、そして優しく説く姿がこれまでのレッドローズの過去のあれこれが容易に想像できるほどの説得力でさすがだなと。ピンクちゃんにはママがいない。普通ならママに教えてもらうべきことを、レッドローズが教えてくれたのかなという母性も感じました。やはり吉村さんは台詞まわしが抜群なんだよな。ピンクに「ホワイトローズはゴリゴリのホモよ」って教えたときの「そんだけー」とかも好きだし(笑)、「あたしに仕事、させないでちょうだい」とか「捨てられるわけないじゃない」とか本当聞くだけで心臓がぎゅってつかまれるような気分になる。直球で心に届くんですよね。この芝居を見て、ますます家城作品で吉村崇を見たい!!!って欲求が高まっちゃいました。

『ピンクの指輪ちゃん』は本当に乙女少年団のコンセプトである、愛と花とオカマの物語。いろんな愛の形が詰まった作品でした。見てるときはこのシーンは余分(笑)って思うんだけど*4、通してみるとあーあれは必要だったんだな、あれがあってこそだなと思えるんですよね。セットもポップで、途中の急なダンスとか、全部がエンターテイメントでみんな可愛かった。見た目もキャラクターも。本当みんな大好きでした。なにより、演者である芸人さんがブログやtwitterで「終わりたくない」「こんな面白い舞台、見ないとダメ」って言ってるのが良い舞台だった証拠ですよね。本当幸せな時間を過ごしました。

最後に昔話を。なんで昔語りうざい!って人はここまでで。

久々に乙女少年団が復活すると知ったときは本当に嬉しかったです。でも家城さんが出演せず、キャストもあの頃のメンバーは少なくと若干残念な思いもありました。それでも申し子である吉村さんが出る喜びもあって複雑でした。でも出演者として名を連ねてるのは、演技に定評があって終わってみればいつもの乙女少年団なんですよね。笑って、泣いて、キラキラした世界に圧倒されて、心が嫌というほど揺さぶられる乙女少年団でした。やっぱり見れて嬉しかった。あの頃乙女少年団を見ては数日ぼーっと乙女の世界から帰って来れなかったことを思い出しました。そして乙女少年団=劇団員は家城さんひとりってことを痛感しました。家城さんの乙女としての芯がぶれなければ、乙女少年団なんだなって。
でも最後に悪あがきをひとつ。終演後、もし家城さんが「ピンクの指輪ちゃん」に出たとしたらどの役かな?って考えて、直後にはスミレちゃんかなーって思ってたんです。でもこうやってブログで感想を書きながら、改めてキャラクターを噛み砕いてい見ると「レッドローズ:家城」「ホワイトローズ:吉村」がしっくりくるな。ただのガーベラって話ですけどね(笑)

*1:シューレスジョーに言わせれば、小学生女子

*2:しかし作者である家城さんが使ってるんだよなー。観客のほうが変な思い入れが出来ちゃうんだなーって思いました。

*3:後々家城さんが吉村さんを堤真一へと育てようとしたら、仲良くなりすぎて結果喧嘩別れとなりますが(笑)

*4:チ●コ取っちゃおうとか、ダンスとか