神保町花月『ぶす』

作:栗山直人
演出:田所仁
出演:
アームストロング安村/ライス関町
マキシマムパーパーサム/畑中しんじろう
広瀬陽子/なんしぃ(大好物)他

神保町のサイトでこの公演が発表されたときに、栗さんが脚本ってどうなるんだろう?ってちょっと不安でした。でもストロングナインのユニットコントを見てると、各芸人に役を当てるのが上手なイメージだったので、安村さんと関町さんをどんな風に魅せてくれるのか楽しみでもありました。
これがぴったり。二人のキャラクターを存分に生かしたお話で、楽しいしほっこりするしとても素敵なお話でした。いろんなトレンディドラマの名シーンをオマージュし、転換は作家&演出家の世にも奇妙なタモさんだったりと、ロングコントな感じもありながらも、なんせ演じているのが連続ドラマレギュラーな関町さんだから、お芝居として締めるところはきゅきゅっと締めるものだから良いんですよね。がっつりなキスシーンも、普通なら笑っちゃうんだけどちゃんとお芝居に沿ってるので、普通に素敵なキスシーンとして見れちゃう。演出家の意図に沿ってるかなんて知りません(笑)
今とブスと可愛いの価値観が逆転した世界でのアイドルとそのファンの女の子のお話。これが本当に無理なく、すっとこの世界に入り込めたのはオープニングのコンサートシーンがしっかりしてたからなんだろうな・・・。栗山さんが作詞して、ザ・アイドルな曲をつけ、KABUTOを彷彿させるしんちゃんの振り付けで、満面の笑みで歌い踊る『カインズ』がぐっと心を掴んでくれたからこそですね。
安村さんは存在そのものが爆弾のように印象が強いから、すぐこの世界でのトップアイドルが伝わって素晴らしいです。やっぱり好きだなー、安村さんが全力でふざける感じ(笑)なんしぃ演じる彼女に、自分の愛情を表現するように「101回目のプロポーズ」のあのシーンをするもきっちり轢かれるところか、もう模写が上手すぎて(笑)あ、安村さんもだけど、関町さんも車に轢かれる所想像して笑える杞憂な存在だなー。ダンスもやりすぎだし、しょっちゅう轢かれてるけど雫(関町さん)がスキャンダルを起こした時の電話のやり取りがとっても素敵でした。安村さんは笑わせるところ貪欲すぎるほどなのに、締めるとこはきっちりなのが好きです。
関町さんは本当ぴったりの役だったなー。この世界で、聖夜(安村さん)の人気には敵わないから頑張って努力してる感じとか、ユニットとしては人気があるけど本当に応援してくれてるファンはたった一人(しかも可愛くない)しかいない感じが、ちゃんと伝わってくるのが凄いなと。雫のバックグランドがちゃんと見える感じで演じられてるのが本当素晴らしい。いつも応援してくれるファンの子に優しいんだろうなってことがちゃんと伝わるから、目の前で倒れたファンをほっとけないのも無理ないし、心惹かれていく感じも自然で。動物園での、自分の心とは違うのに言ってしまった彼女への暴言、そして心からの告白とキスシーンまでが本当に素敵で。ただ、1回目見たときは「『うん』て言わないとちゅーしちゃうぞ。」の時は雫の背中しか見えてなかったんですが、2回目見たときはちゃんと表情が見えまして、こんな気持ち悪い顔してたのか!!と驚愕してしまいました(笑)この表情に笑わない広瀬さん、凄い(笑)スキャンダルがあっても、大勢のファンが自分を応援してくれるって分かったときの雫さんの、嬉しさが抑えきれない泣きそうででも笑顔な表情が本当に素敵でした。
長澤さんと畑中さんはこの世界を実に端的に表現したコンビだったなー。この二人がホストを勤めるトーク番組ってシーンが一番グダグダしちゃってましたが(笑)この世界でもしんちゃんがブサイクNo.1になれない感じがなんとも・・・(笑)
そして演出家&作家に遊ばれた、マネージャー役のつよしさん。エンディングでも仰ってましたが、誰も得をしないシムケンスタイル(笑)無駄に細かい自転車のカギつけたまま走り出しちゃうってマイム。日に日に上達していった模様です。もう2回目からは見てて「あーまだあのカギ、ついてんのにぃ」ってヤキモキするくらい(笑)ひとつ好きな台詞があって、聖夜が雫に「最近たるんでる。この頃痩せてきたろ!」って怒られた後、聖夜が「これからはピザももっと食べるわ。」マネージャー「夜中の2時にな。」この言い方がなぜか個人的にツボで。なんかカインズとマネージャーの信頼関係が伝わったなーって。
広瀬さん演じるファンも可愛かったなー。雫さんのファンってこんな感じって言うのを、完璧に体現してました。毎回堅あげポテト差し入れしている感じとか、聖夜に『堅あげポテ子じゃん』って呼ばれちゃう感じとか。なんか分からないけど凄い納得。納得なファン像。毎回倒れるシーンで、関町さんからセクハラされるはキスシーンはあるわで、お疲れ様でした(笑)


ロングコントみたいな感じになるのかなって若干ハードルを下げていたって言うのもあるかもですが、本当に見に行って良かったと思える公演でした。本当に上手い人が出ている芝居は、見てて幸せしか残らなくて楽しいですね。しかし、未だにふとカインズの『恋ピンク』が頭をぐるぐるします。アームストロングが作る曲って、いつも頭に残るんだよなー。歌詞も実は素敵です。