神保町花月『アーモンドチョコレート』

作・演出:安達健太郎カナリア
出演:犬の心、ロシアンモンキー、LLR/じろう、江原しおり(ウラダイコク)

あらすじも伏せられ、4本のオムニバスということしかわからないまま見に行ったこの公演。隅から隅まで安達さんらしいお話で、かつファンが喜ぶことは何かってことが本当にわかっているんだなって演出がたっぷりでした。お芝居って言うよりは、ユニットコント?

  • 『お引越し』

これが一番好きな話でした。配役も絶妙だなと。押見さんの静かながらも絶対的に強い感じと底抜けに残忍な言動も、言葉は威勢がいいけれども本当は小心で押見さんの顔色ばかりを伺っている川口さんも、この2人(+池谷さん&中須さん)に良いように扱われている伊藤ちゃんのおどおどした感じと最後に見せた裏切りと。すべてがぴったりでした。本当にレイプ犯が最低で、川口さんの「レイプ♪レイプ♪」のレイプ音頭が心底怖く、こういう表現が安達さんの本っぽいなと。笑えないぎりぎりの線をついてきます。そして復讐を誓う福田家。血まみれでごろんとダンボールから出てきたときのあの存在感。今回は本当良席で見てたので、衝撃が半端無かったです。怖くて切なかった。特にお母さんの、復讐を終えたときの放心した表情と、すべて終わったという無な福田さんの表情が印象的です。で、最後の中須さん。あれは中須さんしか無理な役だなー。あの絶妙な抜け感。一言で緊張と緩和を一手に引き受けて空気を換えすぎず、でもちょっと笑いにシフトさせる。個々まで見て改めて、すばらしい配役だなって。

  • 『最後の晩餐』

これは犬の心の本領発揮ですよね。押見さんも池谷さんも魅力たっぷり。池谷さんのイエスっぷりがぴったりで。ぜんぜん許してない(笑)いじめ方が地味のきわみなのがじわじわきます。それをこれまた良い表情で受け止めるのが押見さん演じるユダっていうのがたまらないです。押見さんって本当にこういうのが似合う(笑)この二人がシリアスにユダの裏切りとそれに伴う後ろめたさを表現するから、ほかの4人がふざけてても芯がぶれないというか。板にジャムで「ユダ」とかいて、オムライス気分だと言い放つ福田さんが居ても、ガチでかどっこに足をぶつける中須さんが居ても、「っご!」って鈍音のする拳骨を振り下ろす伊藤ちゃんが居てもぶれない世界観。

  • 『for LOVE・・・』

これは本当にファンサービスでした(?)水着にダンスというスペシャルなコント。でも軸は素敵な?ラブストーリー。伊藤ちゃんが彼氏役だと、地球外生物でも受け入れて愛する設定が結構無理なく見れちゃうのが不思議です。また、中須さんの彼女役もなぜか違和感無く・・・。福田さんだけ露出度の高い水着だったんですけど、あれはなぜ?サイズ的な問題?弟役だというのになぜか若干妹な感じだったのもなぜでしょ?忘れちゃだめなペットの太郎の押見さん。あーこういう時の押見さん、本当好きです。自由奔放に舞台上を歩く太郎。驚きのあまり脱糞*1した伊藤ちゃんの尻の臭いを執拗に指で確認する太郎。どれもこれもすばらしかったです。

  • 『アーモンドチョコレート』

これまでの3話が交わる物語。若干福田さん演じる男が伊藤さんを許した訳とか気になりましたけど、でもきれいに収束したなって。LLRの二人がシリアス演技をしていると言うのに、ユダにメンチきってるイエスの表情に釘付けになったり、水着の中須さんにセクハラの嵐の川口さんが居たりと視線が散る!!(笑)


合間は舞台上で着替えて、役を降りて会話をするという趣向で。こういうところもサービス旺盛というか安達さんの計算だなーと思ったり。こんなときにも伊藤ちゃんにいいように扱われる押見さんが居たりと、楽しかったです。
終わってみれば1時間半の公演だったんですが、ぎゅっとストーリーが詰まった見ごたえのあるお芝居でした。

*1:こういうところが安達さんぽいなー