神保町花月『カーテン』

脚本・山里 亮太
演出・岩井 秀人(ハイバイ)
出演・
ゆったり感/ノンスモーキン/ピクニック/イシバシハザマ
ジャンピングニー/少年少女/工藤史子
あらすじ(公式HPより)
ある一つの国が大きな力によって二つに引き裂かれた。
その間には「カーテン」と呼ばれるものがひかれた。

かなり好きな芝居でした。山里さんの脚本って所にだけ惹かれてチケットを購入したのですが、後日発表された追加キャストがモロにツボだったので期待度も上がりました。第2次世界大戦時の某国を思い起こさせる独裁政権下の日本。名古屋あたりで東西に分けたコンクリートのカーテンの両側での切ないお話。


ゆったり感江崎さんは、以前に神保町で見た際の演技がとてもよくって、座長としての芝居も楽しみでした。その期待を裏切らない主役ぶり。役柄としては。最初少し若すぎるのではないかと懸念したのですが、物語が進むにつれてちゃんと「若き天才、若きエリート」に見えてきて。最後、総理に射殺される直前の表情がとても良かったな。
比べて中村さんですよ(笑)劇中でも言及されてましたけれども・・・実際大根なんですよねぇ、残念ながら(笑)中村さんの脇を固めているのが、達者な中尾さん&石橋さんだから余計に。最後にはその演技が、だめな総理、独裁者らしさと相まってそれこそ中村さんの主張する「味」になってたかなと。
で側近3人。キヨちゃんに関してはとにかく「死ぬの早っっ!!」(笑)でも楽屋ブログを読むとこれでも長く生きたほうだとか。まぁ、キヨちゃんが死んでから物語がぐんと深くなったとは思うけど。中尾さんの芝居は、ベルベットの「愛の賛歌」を見たときに凄く素敵で、今回追加キャストに発表されてから凄く楽しみでして。総理の右腕、冷静さや冷酷さが中尾さんの風貌と相まって最高でした。失礼ながら意外な演技の巧さだったのがイシバシハザマのお二人で。コント師って言ってもショートコント中心だから、演じるイメージがなかったですし。石橋さんはラスト、ウイルスに侵されているのが徐々にわかる演技がとても自然で素晴らしいなと。
研究所のメンバー3人。硲さんもいつもの雰囲気とは全く違ったオタクを好演でびっくりしました。オタクとしての演技が素晴らしかったからこそ、その後西側のシロアリだったことを独白するシーン、博士の墓参りのシーンが特に際立ったなと。菊池さんはやっと演じている姿が見られて嬉しかったです。やっぱり上手なんですよね。教授にだんだんと疑いを持ってしまう苦悩の様が凄くリアルで。しかもどんどん22歳に見えてきちゃう。あの眼鏡にベストがはまるはまる。
今回1番良いなぁと思った3人について。ジャンピングニーの八木さん、ピクニック、工藤さん。この3人のシーンの良いこと。今回の芝居の中で一番心を持っていかれたシーンは工藤さんとピクニックのシーンでした。前半のまだあのカップルが幸せだったときの、八木さんと工藤さんのシーンも、ものすごくこそばゆくて好きでしたけれども、あんなに切ないシーンにつながるとは。前半でとても辛い現実がせまる中でも、ほのぼのと暖かいカップルだったからこそ、後半のあのシーンがとても生きていたなぁと。ピク兄は神保町で見るたびに好きになっていく芸人さんです。今回も期待を大きく上回ってくれて、嬉しいやら恐ろしいやら。彼はどんだけ出来るんだと。彼女のへの想いをしたためた手紙を親友に託す、直接言葉や行動で示したわけでもないのに痛いほど感じる男の友情。そして彼女への愛情。そして、その後のコンクリートのカーテンを挟んでのノックの合図のシーン。ノックをすることをためらって、でも友との約束だと悲しみや良心に耐えながらノックをするピク兄。ノックをするも返事がなく、悲しみから崩れ落ちるもノックが聞こえた瞬間のあの笑顔をもった工藤さん。このお二人だからこそのシーン。特に「アイシテル」のサインのノックのときの対照的な二人の表情に、見ているこちらはきゅーっと心を締め付けられて涙が止まらなかったです。極め付けに、エピローグで、墓石を5回ノックする工藤さんの姿に再び涙が。この二人の演技を堪能できたのは本当に幸せでした。


脚本としては、数箇所疑問が残る点も在りましたがそこを穿り返しても仕方ないことで。ただ、エピローグ的に助手2人にウイルスのからくりを話させるのは蛇足かなと。ここはみているこっちに想像するのりしろを残して欲しかったなと。