神保町花月『kiss kiss kiss2010』

作・演出:カリカやしろ
出演:
平田敦子
カナリア安達、チーモンチョーチュウブレーメンジャングルポケット

カリカコントMEETSのエンディングで家城さんが神保町の作品を上演するとおっしゃって。しかもキャストが平田さんっていうので楽しみでしかなかった公演でした。恥ずかしい程のキスの流れ星を見てきました。
めちゃくちゃつらつらと書いてます。家城さんの脚本は、再演することもあるので以下ネタばれガンガンなんでお気を付けくださいませ。ではたたみます。


見終えた瞬間に思ったのは、本当に家城さんの作品と演出が大好きで大好きで仕方ないってこと。終わった瞬間から「次の作品が見たい!!」って思ってしまう中毒性があると思います。そう考えると、数年前1年に4本も乙女少年団で作品を発表してくれてたのは幸せだったんだなって思いますね。今までの家城作品に比べて、とてもストレートな愛の表現たっぷりのお話でたまらなくきゅんきゅんしました。でも愛することによって見えてくること。相手のいやなところ、自分のいやなところと向き合わされて、反面それまで気付かなかった人の深いところに潜んでいる温かさや、愛情を引き出すところが好きです。太子の周りに起こる恋の話はすごくポップでファンタジーなのに、オフィスでの太子とOL3人の会話は出来事は痛々しくなるほどのリアリティだったり。また劇中でのコウの思想、思考がそれ単体でも十分1本話ができるような、特に太子と出会ったことによって生まれた本の内容は、それだけを膨らませて芝居にして欲しい程の作品で、あんなエロいキスシーンと共に進められたシーンだったのに感動でした。クスリに対する表現もこのタイミングでここまで書くか!って驚きで。家城さんのクスリに対するスタンスっていうのをこう表したかと。また芸人という立場であるのに、ガモンに『太子は俺のものだろ。ガモンはみんなのものだよ。あたりまえだろう』って言わせてしまうっていうところも好きだなと。セリフもすごく心に刺さるものが多くて、何度もぐっとしました。別に涙するってわけではないけれども。『人は愛されることをすぐ忘れてしまう』『一緒にいるだけで幸せと思ってた。でも違った。愛されるからこそ苦しくて、愛されるからこそ不安になって、愛されるからこそ嫌いになった。』『努力もしないで、求めているだけだからつらいんだ』『呼吸よりも早くあなたのことを好きになってる』あたりがたまらなく好きでした。
演出もやっぱり大好きで。前回神保町で演出したのは、本を書いたのは田所さんだったけどやっぱり書いた本人が演出するよさがありますよね。全体を包むポップな雰囲気、シャングリラの楽曲、急なダンス。どれも最高です。オープニングの演出で、ダンス&安達さんがマイク片手に登場したとき「これこそ家城演出だ!!」って思ったらなんかぞくぞくするほど嬉しくて、エンディング前でもう一度ダンスを挟んで物語が終わるってなった時もワクワクがすごかったです。


平田さんは素直にこれだけのキスシーンをこなすのだけでも大変だろうなと。最初の本当にもてない三十路女子だったのが、いろんな男の人と恋をするごとに綺麗になって、きらきらしてきて。でもすべての恋で痛みを感じ、恋に疲れた姿は本当に見てて切なく、辛かった。福田との恋は翻弄され、「これかー!!」と携帯の誘惑に負けモラル太子が崩壊したり、「恋人同士でDVD見るときは、こうするものだよ」と言われてものすごい顔だったのは笑っちゃいました。DVDのくだりは思ってたことを代弁してくれた気分で(笑)アキラとの恋の時は、アドレナリン全開でエアバンドをこなす姿が完璧すぎて爆笑でした。本当に芸人のパフォーマンスを凌駕する素晴らしさ。そりゃアキラに『太子が俺を追い越しちゃう』って言わせますよ。ガモンとの恋の時が一番大変そうだったな。『私はガモンが好き、私はガモンが好き』って言い聞かせてる姿に爆笑でした。確かにきつそうだった。でも平田さんがぶれた演技をするところをあまり見たことがなかったので、斉藤さんの威力ってすげーなーってそっちに感動するくらい。コウとの恋の時で一番好きだったのは、DVDを見るくだりで「キスとかするんじゃないの?」という疑問に対するコウの答えを聞いて『反論の余地がないわ』と嬉しそうにしているところが可愛らしくて好きでしたね。


1番目の恋人:福田を演じた菊池さんが一番見てて照れくさかったです。演出なんだろうと思っているのに、何度でも脳裏をよぎるリアル感(笑)あんな恋人、嫌です(笑)オフィスでのできる男というよりも誰にでも良い顔する信用ならない男に写ってしまったんですけどね。それと相反しての恋人だけに見せる甘い顔が何とも。『姫、シーの後はミーで楽しんで』なんて言えちゃう男なんて、嫌だ(笑)太子に好きなところを言ってと言われ、何個も上げたのち『あとどれだけ言えばいい?』『もういっぱい貰いすぎた』のやり取りが好きでした。でもその甘さがあったからこそ、魔法が覚めた後の冷酷さが際立ってよかったなと。その後、横領で逮捕された後が結構好きでした。どん底に落ちたからこそ気付いた本当に自分を思ってくれている人に気付かされ、最後は幸せになれみたいでよかったなって。オープニングのブレイクダンスはやっぱり格好いいな。そういえば菊池さんの場面は回によって会場の反応が違って面白かったです。きゃっと言って引いてしまうより、キスシーンは笑って、ダンスシーンは盛り上がって拍手して、甘い台詞には笑ってって反応の時の方が見やすかったです。芸人芝居を張り詰めた空気の中で見るのは辛いですよ。


2番目の恋人:アキラはブレーメンの関根さん。若干棒読みなセリフ回しが、相手が平田さんなだけあって気になってしまったんだけどそれがジャンキーっていう役柄とマッチしてると思えてからは見やすかったです。アキラは一番キスにバリエーションがあって、笑いも起こる面白キスでした。マシンガンキスなんて、平田さんの頭ががっつんがっつんなってて大変そうだったー。不発弾キスにいたっては苦笑しか浮かばない(笑)クスリをキメてるバキバキの顔でセリフを言ってるのは素直にすごいなと。


3人目の恋人:ガモンの斉藤さん。問題ターン(笑)まずアイドルって!まさかのレミゼ。最初見たときに気になって仕方なくて、見終えてすぐレミゼに詳しいお友達に「何のシーンだっけ?」って教えてもらってすっきり。あんな良いシーンを・・・(笑)平田さんの役をぶれさせたのもすごいよなー。「怖い(太子)」「何が?(ガモン)」「顔が(太子)」「そうだと思った(ガモン)」って(笑)二人で演じてラブラブしてたのに切なかったこの後。好きだから独占したいのに、「スターの自分はみんなのものだ。それを独り占めしようなんておかしい」って恋人に言われたら悲しすぎるな。斉藤さんって言えばなんとも言えないダンス。シャカシャカって音がしそうな、無駄に動いているだけのような独特なダンス。菊池さんの格好良すぎるダンスとの対比で楽しすぎました。やっぱり踊る斉藤さん面白い。


4人目の恋人:コウを演じた安達さん。もうエロい、エロい。色っぽいとかを通り越して卑猥でした(笑)私は本当にひねくれてて、安達さんの常軌を逸した演技が好きで、それにとても色気を感じるので太子に「視力を失ったからこそ見えてくるもの、得られるもの」を体感させている時のフェロモンのダダ漏れ具合はすごいなとただただ感嘆。ここはもはや耽美の世界観で素晴らしかったなと。なによりこの場面ですごいなと思ったのはコウが考案して話しだす小説の内容。本当想像するだけで面白そう。「君が真面目であればある程、罪の意識にさいなまれる。」「加害者と被害者の立場が入れ替わるんだ」本当これだけで1本見たい。そんな色気しかなさそうなコウなのに、太子に「コウさんはよく笑うのね」と言われ、一瞬反論しそうになりながらも「素直じゃないね」とはにかむように笑う姿はちょっと可愛らしかったりと安達さんのファンにはたまらない役だったんではないでしょうかね。


本物の恋人:小林を演じた岡部さん。このお芝居、最初から最後まで小林に注目しっぱなしでした。岡部さんって神保町でいつも素敵な役柄を担ってますよね。見るたびに良いな、次もみたいなって思います。今回も本当良い役だったな。途中でたぶん、最後太子は小林に幸せにしてもらえるんだろうなって想像つくんだけど、セリフの端々&行動が素敵で。最初に雨の中、太子に「福田さんのことが好き」って言われた時の「知ってたよ」とか、その後の傘を置いていくところ。オフィスで太子がOLちゃん達にちゃかされているのを見たときの「そういうのよくないと思うよ。嫌いだな、そういうノリ」ていうちょっとしたセリフ。太子にどこが好きなのと問われての「だらしないところ。」「ずーっとずーっとキスしたかったよ。」「好きになったんじゃないの。ずっと好きになったの」どれも素敵すぎるセリフでした。一番好きだったのは告白。
太子「人を好きになるのが怖くて、次に嫌いになるのが怖かった。今はまた人を好きになるのが怖い」
小林「太子は僕が幸せにしちゃうから、安心しちゃっていーよー。」
小林「びっくりした?気付かなかったでしょう。俺、隠すのうまいから」
ここが本当にめちゃくちゃ好きで仕方ないシーンでした。小林というか、岡部さん本人が持つほわほわした雰囲気と相まってなんてやさしい告白何だろうって。体の中で何かがたまって爆発しちゃいそうになるから、キスしてクリアにするみたいな息抜きなキスが一番日常的なのに一番素敵に感じられました。こういうところを表現する家城さんってすごいなって。太子の「一番安心する」ってセリフもしっくりきたなって。


OL3人:しら子・おたえ・たけ美。家城作品恒例な感じの女装な女役。太田さんだけはバケモノの形相でした(笑)けど、しら子&たけ美はふうつにかわいかったですね。おたえちゃんは天然2人のまとめで大変そうでしたね。興奮するとストールばっさばさしてるのが印象的。太田さん的には、菊池さん並みのダンスを頑張ってるなと。経験者じゃないのに素晴らしい!たけ美ちゃんは一番女の子だった。キスシチュエーションが独特なのもなんか納得できちゃう感じ。でもってDJタケヤマ的ダンスはツボ(笑)ずるすぎます。
しら子ちゃんは良い役だったな。福田が浮気を繰り返しているのをわかっていながらも、好きだから別れられない。浮気されるより、別れる方が辛いと涙するのが切なくて。だからこそ、福田が逮捕されてもただ一人毎日面会を欠かさず福田の本当の愛を手に入れる。「『ごめんな』より、『ありがとう』が嬉しかった」ってセリフすごいよかったです。しら子ちゃんには本当に福田を幸せになってほしいと物語をはずれて思ってしまうくらい。そんな良いシーンもあれば、普段の白井さんが見え隠れするシーンもあったり。しびれるキスシチュエーションをお互い言い合ってる時、キスから急にリゾート旅行計画に移行する恐怖(笑)キスに興奮しての「縛ってー!!」(笑)


最後にピンクの招き猫:ボンさん。恋愛の神様にそぐわないとぼけた声で笑ってしまいました。この神様が人間くさくて好きだったな。パスタだからイタリアンと言い張ったり、事故を示談で済まそうとしたり(この時の太子のアドバイスも笑った)、好きになった男がずっと自分を好きでいてほしいと願った太子に「死んでまえ」と言い放ってしまうところとか。ボンさんの声だから、ファンタジーな神様の存在がもっともっとふんわりしたものになってよかったなーと。


本当に好きな作品でした。別に伏線があったりとか、考えさせられる話ではないけれど。見れば見ただけ幸せになれる気がするから何度でも見たくなるお芝居でした。また主要キャストが誰一人見劣る人がいなかったので、見応えが半端なかったのもあるでしょうね。私個人の願いとしては、太子の役を家城さんが演じたりなんかするバージョンを見たいなと思ってしまいました。やっぱり家城さんの書く本にはわくわくさせられるし、これからももっともっと見たいなと思います。あー幸せです。